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ホンダ、F1撤退へ 培った技術で挑む大変革期

記事公開日 2020/10/3 18:30 最終更新日 2020/11/13 20:08 EV CASE F1撤退 日本株ホンダe NQNセレクト

ホンダの株価とF1参戦の歴史

【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】ホンダ(7267)は2日、2021年のシーズンをもって自動車レースの最高峰、F1から撤退すると発表した。自動車産業が100年に1度の大変革期を迎えたといわれるなか、今後は経営資源を電気自動車(EV)など次世代車の開発へ注ぐ。創業者・本田宗一郎氏の意志を引き継ぎ、F1で培った技術を生かして競争力を高められるかが試される。

■参戦と撤退の歴史

ホンダレーシングのSNSにはファンから惜しむ声があふれた。1964年のF1初参戦以降、ホンダは輝かしい成績を残してきた。2015年に4度目の挑戦を果たして以降、昨年からはトロロッソ(現:アルファタウリ・ホンダ)、レッドブル・レーシングの2チームにエンジンなどのパワーユニット(PU)を供給。昨年のブラジルグランプリ(GP)ではアイルトン・セナらと黄金期を築いた1991年以来となるワンツーフィニッシュを飾った。

今年のF1は新型コロナウイルスの感染拡大でシーズン開幕が大幅に遅れ、過密スケジュールでレースが行われている。ポイントでは昨年に続きメルセデスのルイス・ハミルトンが大きくリードしているが、ホンダ勢もレッドブルのマックス・フェルスタッペンを筆頭に強さを発揮している。イタリアグランプリでは、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーが大荒れのレースを制し、初優勝を果たした。さらに先週のロシアグランプリではホンダのPU勢4台ともポイントを獲得した。

そんなホンダがF1を撤退する――。2021年以降の契約延長の話がなかなか出てこず、ファンの間では「もしかしたら……」という声もあったが、ショックは大きい。

■コロナだけじゃない要因

ホンダがF1を撤退するのは新型コロナウイルスの影響による業績悪化も少なからず影響しているとみられる。世界経済の悪化や生産の一時停止もあって、北米を中心に四輪車販売が落ち込み、頼みの二輪車も新興国を中心に苦戦を強いられている。2021年3月期の連結純利益(国際会計基準)は前期比64%減の1650億円と、大幅な減益を見込む。二輪車の回復には時間がかかるという見方があり、株価もコロナ感染拡大による急落前の水準に近づきつつあるトヨタ(7203)と比べると、出遅れ感が否めない。

ただ、F1で培った技術力はホンダにとって大きな武器になるはずだ。ホンダは2030年までに世界で販売する車の3分の2をEVなどの電動車にする方針だ。ホンダレーシングはF1で蓄積した技術と知識をEVや燃料電池車(FCV)の分野に注ぎ込み、カーボンニュートラルの将来の実現に向けてイニシアチブを取るとホームページで明らかにした。

その大きな一歩となるのがホンダが30日に国内で発売する「ホンダe」だ。人工知能(AI)など最新技術を駆使した同社として初の量産型のEVで世界に展開する構えだ。

「勝っておごることなく、勝った原因を追求して、その技術を新車にもどしどし入れていきたい」という本田宗一郎氏の言葉はいまもホンダのDNAに脈々と流れている。F1撤退はファンにとってはさみしいニュースだが、待ったなしの「CASE」時代で鮮やかな勝利を獲得するために、ホンダにとって残るシーズンの戦い、そして業績回復に向けてここからが勝負の時だ。

■ホンダレーシング、F1でのこれまでの歩み

1964年 F1初参戦
 65年 メキシコGPで初優勝
 68年 シーズン終了後撤退
 83年 F1再参戦
 87年 中嶋悟がロータス・ホンダで日本人として初のフル参戦、日本中に「F1ブーム」巻き起こる
88~91年 マクラーレンとタッグを組み4連覇、黄金期築く
  88年は名ドライバー、アラン・プロストとアイルトン・セナが16戦中15勝を挙げる
 92年 シーズン終了後撤退
2000年 3度目の参戦
 06年 ジェンソン・バトン、ハンガリーGPで優勝
 08年 リーマン・ショックの影響でシーズン終了後撤退
 15年 4度目の参戦
 18年 トロロッソ(現:アルファタウリ・ホンダ)にPU供給
 19年 レッドブル・レーシングにもPU供給開始、2チーム体制に
6月 レッドブルのマックス・フェルスタッペンが今季初勝利、ホンダは13年ぶりの優勝を果たす
11月 ブラジルGPでホンダ勢が1991年以来のワンツーフィニッシュ
2020年7月 新型コロナの影響で4カ月遅れでシーズン開幕
8月 英シルバーストーン・サーキットでフェルスタッペンが今季初優勝
9月 イタリアグランプリでアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーが初優勝
10月 2021年シーズンをもって撤退を発表

著者名

日経QUICKニュース(NQN) 尾崎 也弥


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