今週(10月26日~)の上場REIT(不動産投資信託)市場を展望するために、前週にQUICKが配信したREIT関連ニュースを振り返った。前週20日に東証REIT指数が大幅安になったにも関わらず、日銀が買い入れを見送ったことから、日銀がREITを積極的に買い入れにくい状況だと見る声があった。需給面への不安がささやかれるなか、決算発表が相次いだこともあって、市場の関心は決算・業績予想の内容に向かっている。なお、今週に予定されているREITの決算発表はない。
前週の主要REIT指標の騰落率は以下となる。
銘柄名 | 騰落率(%) |
REIT指数 | -0.14 |
REITオフィス | -1.04 |
REIT住宅 | 1.47 |
REIT商業 | 0.33 |
東証REIT物流フォーカス指数 | 0.30 |
■オリックスJRE(8954)― 21年2月期の1株当たり純利益17%減(10/20)
総合型REIT(不動産投資信託)のオリックス不動産投資法人(8954)が19日発表した2021年2月期の業績見通しは、1株当たり純利益が前期比17%減の3241円となる見通し。従来予想(3294円)をわずかに下回る。1口当たり分配金は3490円と据え置いた。新型コロナウイルス感染症の影響としてテナント賃料の一時減額やホテルの変動賃料の減少、商業施設からの一部テナントの撤退などを織り込んだもよう。減価償却費に関連する圧縮積立金を一部取り崩して分配金に充当する。
今回発表した21年8月期の業績見通しは、1口当たり純利益が3350円、同分配金は3350円を見込む。(QUICK Market Eyes 弓ちあき)
■日銀はJ-REITを積極的に買いにくい状況(10/21)
20日、東証REIT指数は前日比1.11%安だった。比較的下落率が大きかったが、日銀はJ-REITの買入れを見送った。
野村証券は20日付のJ-REITセクターリポートで、「20日の東証REIT指数は前引け時点で前日比0.2%高と、日銀としては買入れの判断が難しかった」と推測。19日に日銀がJ-REITを12億円買い入れた際は、同日前場に東証REIT指数が一時0.7%安まで下落していたことから、「日銀はJ-REIT買入れの判断にあたって、前場の動きを考慮していることが窺える」との見方を示した。
また、日銀はJ-REITの買入ペースを年約1800億円を目安としているが、20年は10月20日まで買入額が979億円と、消化率が54%にとどまっていることに触れ、「日銀が既にJ-REITを大量に保有していることが考えられる」とも指摘。「日銀は既に21銘柄について大量保有報告書を提出しており、保有比率が日銀の定める上限10%に近づいている銘柄も複数ある。日銀としては積極的に買い入れにくい状況と言える」との見方が示されている。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■J-REIT、相場上昇には各社の業績予想で安心感をもたらす必要(10/22)
野村証券は21日付のJ-REITリポートで、21日時点のJ-REITの加重平均配当利回りは4.2%、株価/NAV(純資産)倍率は0.92倍と直近5年平均の3.9%、1.06倍と比べて「相応に割安な水準にある」と指摘。それでも、東証REIT指数が年初来(21日時点まで)で22%下落し、TOPIX(同4%安)を大きくアンダーパフォームしている状況について、「多くの市場参加者は現在、コロナ禍での景気悪化や企業と個人の行動様式の変化が不動産賃貸市況に与える影響の度合いを見極めようとしており、不動産賃貸市況の性質上すぐには大方の見方を好転されるような材料は浮上しにくいとの判断からも、J-REITへの投資を手控えている」との見方が示されている。
これらを踏まえ、「今後のJ-REIT相場上昇のためには、J-REIT各社の業績予想の内容が市場参加者に安心感をもたらす内容のものであり続けることがまずは必要になる」との展望が示された。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■REIT決算&開示情報
10/19 <決算>オリックスJRE(8954) 分配金 (3,840円 2020/08実績)、2021/08予想(3,490円)
10/19 <決算>アコモF(3226) 分配金 (1万108円 2020/08実績)、2021/08予想(1万80円)
10/21 <決算>森トラストホテ(3478) 分配金 (1,761円 2020/08実績)
10/21 <開示>プロロジス(3283)プロロジスパーク岩沼1の再開発決定及び開発コンサルティング業務の委託契約締結に関するお知らせ
10/22 <決算>ケネディ商 (3453) 増額修正 分配金(6,490円←6,093円 2020/09)