コロナ禍に見舞われた2020年。世界の金融市場が動揺するなかでも、大きく下げずに踏ん張ったファンドがある。今回は、主に海外の株式に投資する国内公募追加型株式投資信託(ETF、DC専用、SMA・ラップ専用除く)について、コロナショックでの下落率が小さかった順にランキングしてみた。中国の株式に投資するファンドが上位に目立った。
■「深セン・イノベーション」が首位
下落率の算出方法は19年12月末時点の基準価額(分配金再投資ベース)を起点に、コロナショックによる最安値を比べた。参考までに、配当込み東証株価指数(TOPIX)は3月16日に付けた最安値まで28.14%下落した。
最も下落率が小さかったのは日興アセットマネジメントが運用する「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」のマイナス1.02%(3月24日時点)。年初から2月下旬にかけて上昇していたため、19年12月末との比較ではほとんど値下がりしなかった。
このファンドは主に中国の深セン証券取引所に上場されている人民元建ての中国本土株式(中国A株)が投資対象で、開発力、競争力などに優れたイノベーション(技術革新)関連企業に絞り込む。深センは「中国のシリコンバレー」として注目されており、深セン証券取引所はIT(情報技術)やヘルスケアなどニューエコノミーの民間企業が多く上場している。
コロナショック後は飛躍的に運用成績を伸ばし、1~9月の騰落率(分配金再投資ベース)は40%を超えた。好成績の理由として日興アセットマネジメントは「『非接触(タッチレス)社会』構築の必要性が高まり、テクノロジー関連セクターが注目された」ことなどを挙げている。
■中国のイノベーション関連が堅調
4位の「ダイワ/バリュー・パートナーズ・チャイナ・イノベーター・ファンド」はショック時の下落を抑えつつ、その後の回復局面での上昇率がとりわけ大きかった。1~9月の騰落率は38.7%と、「深セン・イノベーション株式」に次ぐ高水準。3月に付けた最安値からの上昇率では10本中で最大だった。中国のイノベーション関連企業に投資するファンドで、最新の月次レポート(9月末時点)をみると、深センA株の銘柄を48%組み入れている。
■リスク・コントロール型もランクイン
下落率が小さかった海外株式型の上位10本のうち8本は中国関連だったが、それ以外の2本は「リスク・コントロール型」がランクインした。相場環境に応じて実質的な株式の組入比率を調整し、基準価額の下落リスクを抑えて運用する。
2位の「UBS米国成長株式リスク・コントロール・ファンド」は、高い収益性と成長性が期待される米国の株式に投資する。株式市場で下落リスクが高まっていると判断した場合は、株価指数先物などを用いて実質的な株式の組入比率を減らし、下落リスクの低減を目指す。同じ投資戦略を用いて国内株式で運用する「UBS日本株式リスク・コントロール・ファンド」も国内株式型のランキングで2位だった。
(QUICK資産運用研究所=望月瑞希)
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