コロナショックで世界の株式相場が大きく下げた3月から半年以上が経ち、運用環境は改善してきた。投資信託の運用がどれくらい回復したか、複数の資産に分散投資する「バランス型」ファンドについて調べてみた。
■9月末時点の「回復度」をランキング
対象は国内公募の追加型株式投資信託(ETF、DC・ラップ専用を除く)のうち、バランス型のファンド(QUICK独自の分類)。9月末までの値動きを比較し、「回復度」の上位と下位をランキングした。
「回復度」の算出方法は、コロナショック前に付けた今年の最高値(A、分配金再投資ベース)を起点とし、そこからショックによって付けた最安値(B)までの下落幅を計測。9月末時点(C)でどれくらい持ち直したかを比較して順位をつけた。AからBへの下落幅を9月末までにまるまる取り戻した場合の回復度を「1」とし、数値がそれ以上ならショック後に今年の最高値を更新したことを示す。
■1位は「ダイワDBモメンタム戦略」
回復度1位は大和アセットマネジメントが運用する「ダイワDBモメンタム戦略ファンド(為替ヘッジあり)」の1.554だった(図表参照)。米国の株式と長期金利、米ドルキャッシュ(現金)、金(ゴールド)の4つを投資対象とするファンドで、市場環境に合わせて資産配分を緩やかに変更する。
3位の「楽天みらいファンド」は、ショック時に付けた最安値からの上昇率がプラス24.3%と上位5本中最も高かった。同ファンドは日本を含む世界の先進主要国および新興国の株式や高利回り社債、新興国債券への分散投資に加え、株式などが下落した場合にヘッジとなり得る資産などにも配分する。
4位の「ユナイテッド・タートルクラブ・ファンド・安定型<愛称:ゼニガメ>」は、基準価額の上昇と下落の幅が上位5本で最も小さかった。日本を含む世界各国の株式と債券、為替取引や関連する派生商品(先物取引やオプション取引など)に投資しており、配分は債券型ファンドの50%、絶対収益追求型ファンドに50%を基本としている。
■保守的な運用に切り替え、上昇の波に乗れず
一方、回復度がゼロだったのは「MHAMライフ ナビゲーション 2020」と「トレンド・ナビゲーション・オープン」の2本。どちらもコロナショックで急落した後、ずるずる下げ続けた。
「MHAMライフ ナビゲーション 2020」は国内外の株式と債券に分散投資し、目標年に向けて運用資産の投資比率を自動的に変えていくターゲットイヤー型。償還に向け今年7月から安定運用に切り替えており、短期金融資産が100%で基準価額がほぼ変動しないようになっている。
「トレナビ」は世界各国の株式、債券、不動産投資信託(REIT)および商品など幅広い資産に投資するファンドで、「過去1年の高値からの下落率を5%以内に収めることを目指す」という運用ルールがある。3月中旬に下落率が5%を超えたため、それ以降は短期金融資産100%での保守的な運用に切り替えた。
下位3~5位は全てリスク資産への投資配分の合計を5%程度とし、基準価額の下落抑制を優先している。このように回復度が低いファンドに共通するのは、コロナショック以降にほとんど安全資産だけで運用している点。株式相場が上昇しても波に乗れず、基準価額の低迷が続いている。
(QUICK資産運用研究所=西本ゆき)