【QUICK Money World 吉田 晃宗】来週(12月14日~)の上場REIT(不動産投資信託)市場を展望するために、QUICKが今週配信したREIT関連ニュースを振り返った。市場では、これまで低迷していた「宿泊施設」と「商業施設」が堅調な一方、年初来で株価推移が良好な「物流」と「住宅」が軟調という、リバーサル(価格推移がこれまでの傾向と逆の動きを示していること)が指摘されている。また、公募増資実施後に株価が軟調に推移している銘柄に注目する見方が出ていた。
来週はREITの決算発表が相次ぐ、14日にRみらい(3476)、ケネディクスオフィス(8972)、いちごオフィス(8975)、15日に星野RR(3287)、インベスコ(3298)、積水ハウスR(3309)、スターツPR(8979)、16日にプレミア投資法人(8956)、17日にトーセイ・リート(3451)が決算を発表する予定だ。
今週の主要REIT指標の騰落率は以下となる。REIT相場全体は底堅く推移した。
銘柄名 | 騰落率(%) |
東証REIT指数 | +0.58 |
東証REITオフィス | +0.55 |
東証REIT住宅 | +0.82 |
東証REIT商業 | +0.55 |
東証REIT物流フォーカス | +o.64 |
■REIT市場、リバーサル鮮明、オフィス上昇はJ-REITにも追い風に=野村証(12/07)
野村証券は4日付のREIT(上場不動産投資信託)リポートで、米国REIT市場ではこれまでの第4四半期に宿泊施設型と商業施設型の株価パフォーマンスが上位1、2番目となっている一方、2020年初から累計で最も株価パフォーマンスが良好なデータセンター型とインフラ型は、第4四半期に限れば株価パフォーマンスがワースト1、2番目となっていると指摘した。
市場参加者が新型コロナ後を見据える中、米国REIT市場では鮮明なリバーサルが起こっているとの見方が示されている。
11月末時点の時価総額が119兆円と、世界のREIT市場の中で突出して大きい米国REIT市場の株価パフォーマンス変化を受け、日本のREIT(J-REIT)市場でもサブセクター別の株価パフォーマンス傾向に変化が見られるとも指摘。「これまでの第4四半期において、20年初から第3四半期まで低調だった商業施設型、宿泊施設型の株価パフォーマンスが上位1、2番目となっている一方、年初来で最も株価パフォーマンスが良好な物流型と住宅型がワースト1、2位となっている」とし、「米国REIT市場ほど顕著ではないものの、J-REIT市場でもリバーサルが起こっている」と指摘した。
それでも、野村証は「景気敏感なサブセクターに対して物流型が一旦アンダーパフォームするのは仕方ない面があるかもしれない」としつつも、「米国でインフラREITの平均配当利回りが1%台まで買われていた」点を考慮すると、「日本の物流REITは極端に買い上げられていたわけではない」として、株価水準には上昇余地があるとの見方も示した。
また、オフィスを保有するREITが多いJ-REIT市場にとって、米国オフィスREITの株価上昇は「心強い材料」ともした。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■日銀のJ-REIT買入れ、来年にもルール変更の可能性も=野村証(12/08)
野村証券は7日付のJ-REIT(日本の上場不動産投資信託)リポートで、11月末時点で日銀はJ-REIT市場の時価総額13.5兆円の4.8%に相当する6469億円を保有していると指摘。「こうした保有状況もあり、日銀は出来るだけJ-REITの買入れを抑制したい姿勢と見られる」との見解を示した。
日銀が提出した大量保有にかかる変更報告書によると、4日にジャパンエクセレント投資法人(8987)とユナイテッド・アーバン投資法人(8960)の保有比率が8%台から9%台に上昇した。日銀はJ-REITの買入上限を買入対象銘柄それぞれの発行済み投資口数の10%と定めている。
野村証券の試算によると、既に保有比率が9%を超えている銘柄は2021年中に上限の10%前後に到達するもよう。
リポートでは、21年のどこかのタイミングで、日銀が現状10%としているJ-REITの保有比率上限を引き上げるか、ETFを通じた買入へ切り替えるといった議論が浮上する可能性があると指摘している。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■出遅れが目立つJ-REIT、増資発表銘柄に投資の好機(12/08)
世界経済は正常化に向けて足取りを強め、企業が景況感への自信を深める中、アナリストによる業績予想も上方修正が優勢だ。上方修正が進んだ業種では年初来でみた株価パフォーマンスがプラスのへ転換することが多い中、不動産株はいまだ大きくTOPIXをアンダーパフォームしている。J-REITにはさらなる出遅れが目立ち、増資による需給悪化が過度に嫌気された銘柄は投資の好機といえそうだ。
世界経済の正常化が現実味を帯び始めた。経済協力開発機構(OECD)は1日、世界経済が2021年末までに新型コロナウイルス禍前の水準に回復する見通しを発表した。実質経済成長率が20年に4.2%低下する一方で、21年に4.2%伸びると見ており、見通しの通りに推移すると、21年10~12月期の世界の国内総生産(GDP)の水準がコロナ禍前の19年10~12月期の水準に戻る。
企業の業況に対する見方は大きく改善している。QUICKが実施した12月の短期経済観測調査(QUICK短観)で、全産業の業況判断指数(ディフュージョン・インデックス、DI)は(金融を含む)プラス2と前月調査から4ポイント上昇し、9カ月ぶりにプラスへ転換した。3カ月後を示す「先行き」に対しても3カ月連続で改善を示しており、企業は業績改善に自信を深めている。
アナリストの業績予想の上方修正が増える中、不動産セクターの出遅れが目立つ。主要企業の業績予想の変化を示すQUICKコンセンサスDI(QCDI)は12月に算出対象の16業種のうち10業種がプラス圏に浮上し、上方修正数が下方修正を上回った。QCDIがプラスに転換した業種では年初来でプラスのパフォーマンスを示すことが多い中、不動産はおよそ13%ほど下落した水準で推移している。
J-REITに関してはさらに出遅れが目立つ。新型コロナウイルスのワクチン普及を見据えて内需系セクターへ投資資金が流入が続き、業種別株価指数・不動産業(352)は10月末から12月3日にかけて22%上昇した一方で、東証REIT指数は同期間の上昇率が3%ほどにとどまっている。
投資家の目線が株式の値上がり益へと傾く中、増資による需給悪化を過度に嫌気された銘柄に投資のチャンスがあるといえそうだ。野村証券は3日付リポートで、不動産株とJ-REITのパフォーマンスの開きについて、「J-REITは株式と比べて売買流動性が低いほか、インカムゲインが重視されがちだ。こうした違いが、J-REITの不動産株に対する出遅れの背景にある可能性がある」と指摘した。
またJ-REITと不動産株の状況の違いを考えると、不動産株に関してはM&Aや事業領域の拡大が話題になっていることがある一方で、J-REITセクターでは活発な増資が続き、増資を発表したREITの株価がその後下落し、なかなか反発しない傾向がみられている。こうした状況を踏まえ、同レポートで「増資の内容が厳しく評価されるべきものに変わってきているとは捉えにくい。需給悪化懸念などからの条件反射的な売りによる株価下落は本質的なものとは考えにくく、いずれ解消されると考えられる」との見解を示した。公募増資を実施した銘柄への投資に好機が訪れている。(QUICK Market Eyes 川口究)
■「グロース崩れみたいな相場がいつまで続くんですかね」(12/08)
「きょうは外国人投資家が若干買い越しの一方、リバランスの動きがかなり激しいようです。前日弱かったTOPIXスモールが強かったり、マザーズ銘柄でも小型のところが買われたりしていますから、きのうと逆の動きでいったん調整が一服気味なんですかね・・・。REITはフローが増えてトレーダー周りは忙しいようです。
しかし、前日の米国市場でナスダックは強かったですが、東京市場はモメンタムに欠ける展開です。こういうグロース崩れみたいな相場がいつまで続くんですかね・・・。来週くらいからは外国人投資家のお休みも増え、流動性が心配ですし」(市場関係者)(QUICK Market Eyes 片平正二)
■東証REIT指数先物の売買高が過去最高、SQを控えてロールが活発に(12/09)
大阪取引所(OSE)によれば、東証REIT指数先物(155.555/OD)の売買高が8日に8万1784枚(立会外含む)となり、過去最高を更新したという。これまでの過去最高は9月7日に記録した6万8768枚だった。11日にSQを控えていることから、ロールオーバーが活発に行われている状況だという。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■指数イベント―2回目のFTSEへのJ-REIT組入れ、想定されるパッシブ需要=みずほ証(12/09)
みずほ証券の永吉勇人チーフクオンツアナリストと中村喬シニアクオンツアナリストは8日付リポートで、18日引け後にFTSEへの2回目の組入れが発生する日本の上場不動産投資信託(J-REIT)の個別銘柄で、想定されるパッシブ需要を推計した。
本件を巡っては、FTSEが2019年9月、FTSEオールワールドなどのグローバル株式指数にJ-REITを組み入れると発表していた。20年9月の定期見直しから四半期ごとに25%ずつ計4回に分けて行われ、21年6月の定期見直しをもって完了する。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■11月のJ-REIT、大幅な買い越し主体みられず、調整局面継続か(12/11)
東証が10日発表した11月のJ-REIT(日本の上場不動産投資信託)、投資部門別売買状況によると、買い主体は海外投資家の73億円、ETFフローを反映する証券自己の55億円、投資信託の54億円、生損保の33億円だった。売り主体は個人の191億円が目立った。
いずれの主体も前月から比較すると、積極的にポジションを取る動きが限られた。
みずほ証券は10日付リポートで、11月は新型コロナウイルスのワクチン開発進展でリスクオンとなったものの、東証REIT指数の上昇をけん引するような動きはなかったとし、来年にかけても調整局面が続くオフィス市場への懸念が市場全体の重石となっているとの見方を示した。
J-REITを巡っては、18日の引け後に2回目のFTSEへの指数組入れが発生する予定となっている。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■REIT決算&開示情報
12/11 <決算>INV (8963) 分配金(131円←未定 2020/12)