12月16日に東証マザーズに上場した家電メーカーのバルミューダ(6612)。久しぶりの製造業の上場とあって、人気が集まり、売り出し価格1930円に対し、現在は5000円を超える株価で取引されている。
バルミューダは、主に調理器具、空調・照明の分野に絞って、洗練されたデザインと高機能を売りに比較的高価格の商品を販売している。この分野は大手メーカーも機能とデザインの高度化に力を入れており、競争が激しい。特にデザインの優位性はサステナブルではなくなってきている。
バルミューダは典型的なファブレス経営を行っており、ほとんど生産設備を持たない。これは生産設備の革新による価格競争力の強化ができないことを意味する。製品そのものの技術の優位性を維持・向上させていくことが成長に不可欠なビジネスモデルだ。
出願の増加が続く調理器具、空調・照明家電
成熟感のある家電業界だが、実は調理器具や空調・家電の分野でみると特許の出願件数は着実に増加している。その発明の内容は、ほとんどが高機能化である。
面白いのが、この分野の出願はほとんどが日本企業であるということだ。高機能化に向けた技術開発が続けられており企業のすそ野も広い。活発な技術開発は今後も続くとみられる。
■調理器具、空調・照明家電の登録特許出願件数推移
出所:PatentSQUAREにより日本知財総合研究所作成
特許価値首位は三菱電機
KKスコアを使った特許価値分析をしたところ、調理器具や空調・家電分野で保有する特許価値が最も大きいのは三菱電機だった。以下、シャープ、日立などの大手が続く。その中にあってバルミューダは7位と健闘している。出願状況からみて今後も10位以内を維持する可能性は高いだろう。
■調理器具、空調・家電分野の特許価値ランキング
出所:PatentSQUAREにより日本知財総合研究所作成
なかでも評価が高いのが、軸流ファンに関するものだ。この技術は扇風機を中心とする空調設備に使われている。この発明は広範囲、高出力、低騒音での送風を可能にしており、応用範囲の広さが高評価につながったと思われる。
想定売上高は280億円
将来の売り上げ規模を予想するにあたり、KKスコアがほぼ同じアイリスオーヤマの業績を参考にした。
アイリスオーヤマ単体の2019年12月期の売上高は1611億円であり、うちLEDを除く家電の売上高は560億円であった。アイリスオーヤマのLED事業はロームの事業を生産設備ごと買収したもので、バルミューダにはないビジネスモデルであるが、それ以外の事業の売上の半分は概ねバルミューダと一致すると考える。560億円の半分である280億円の売上高は、バルミューダの持つ特許価値から見れば可能とみる。バルミューダの20年12月期の売上高は前期比13%増の123億円を計画する。特許の側面からはいずれは売上高が倍増してもおかしくない。
■バルミューダの特許価値からみた売上高予想
出所:日本知財総合研究所作成
特許から売り上げを増やす方法は自社販売のほか、ライセンス供与など様々なプランが考えられる。新規上場後も株価が人気を集めているのは、特許価値からみると当然といえる。(2020年12月23日)
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