【日経QUICKニュース(NQN) 岡田真知子】経平均株価が心理的節目の2万7000円を大きく超えて続伸した29日の東京株式市場。きょうから実質的に新年相場入りしているとされ、2021年に強い成長が期待できそうな銘柄が買われている。その1つが電子部品株。コロナ禍に揺れた20年、右肩上がりに株価上昇を続けたが、市場では「さらなる栄華は来年以降に訪れる」との声も聞かれる。
■5GとEVが追い風
村田製作所(6981)やTDK(6762)が、連日で高値を更新している。村田製は午前の取引時間中に一時、前日比0.9%高の9406円を付け、前日に付けた上場来高値(9320円)を連日で更新した。TDKもきょうは前日比1.8%高の1万5570円となる場面があり、2000年9月以来およそ20年3カ月ぶりの高値を付けた。
積層セラミックコンデンサー(MLCC)など、主力分野での需要拡大が電子部品株の上昇を支える。MLCCとは電気を蓄えたり放出したりする部品で、電圧を安定させたりノイズを取り除いたりする電子部品だ。消費者の目には触れにくいものの、電気製品を動かすためには欠かせない。世界市場で日本勢が高いシェアを誇り強みを発揮する分野で、村田製は同分野でトップシェアを誇る。
日本の電子部品株への市場関係者の視線は熱い。ある国内証券のストラテジストは「村田製やTDKといった電子部品株は2つの強力な追い風に支えられ、21年にさらなる飛躍をするだろう」と話す。2つの追い風とは、次世代通信規格(5G)と電気自動車(EV)だ。
※主な電子部品関連株と日経平均株価を2019年末を100として指数化
東海東京調査センターの萩原幸一朗シニアアナリストは「20年は『5G元年』となるといわれた年だったが、コロナ禍の影響もあり21年こそが本格的な5G元年になるだろう」と指摘する。中国を筆頭に、21年以降5G対応スマホの出荷台数が大幅に伸びるとされる。電子情報技術産業協会(JEITA)の予測では30年にはスマホや基地局などを含めた5G市場の世界需要額は18年比で300倍に膨らむという。
世界的な「脱炭素」の潮流に乗るEV市場も今後10年単位での成長が期待される。日本政府などは30年代にガソリン車の新車販売を禁止し、すべてをEVやハイブリッド車にするとの目標を掲げる。ガソリン車に比べEVのMLCCの搭載数が増え、需要は拡大の一途だ。さらにEV化ではEVモーターに注力する日本電産(6594)への期待も高い。
5G、EVというキーワードからはiPhoneの米アップル、米テスラが連想されやすい。東海東京の萩原氏は「これらのスター企業を支える『最強の裏方』が日本の電子部品メーカーだ」と指摘する。他国の追随を許さない高い技術力とそのノウハウを守る体制が日本の電子部品株の強みだ。
■死角は?
リスクもある。地政学面では米中貿易摩擦の状況、輸出に伴う円高リスクに、新型コロナウイルスの感染状況などによっては業績に悪影響が出る恐れもある。ただ萩原氏は「需給の緩みもリスクの1つだが現時点では各社、増産体制にも慎重姿勢で需給は引き締まっている」とみる。
好調な業績と先高観から買われ続ける電子部品株だが、割高感があるとの指摘もある。29日前引け時点では村田製が今年に入り38%、TDKは25%、太陽誘電(6976)が43%、それぞれ上昇している。予想PER(株価収益率)は村田製が31倍強、TDKは25倍強、太陽誘電は27倍強だ。東海東京の萩原氏は「相場全体が強気継続なら割高感はある程度、許容されるだろう」とみる。5GとEVという強力な追い風を背に電子部品株は21年、さらなる極みを目指す。