【日経QUICKニュース(NQN)】大納会を迎えた30日の東京株式市場で日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割って算出するNT倍率は、前日比0.05ポイント高い15.20倍と、QUICKで遡れる1976年4月以降で最高となった。昨年末(13.74倍)から大きく水準を切り上げた。
日経平均のパフォーマンスが良好だったことがNT倍率の上昇に寄与した。2020年の日経平均は昨年末比で3787円(16.0%)高だった。12月29日には2万7568円と、1990年8月15日以来およそ30年4カ月ぶりの高値を付けた。機能性の高い商品や電子商取引(EC)の拡充が評価されたファーストリテイリング(9983)や、半導体関連の設備投資が追い風だった東京エレクトロン(8035)などの値がさ株が好調に推移している。
TOPIXが昨年末比で83.32ポイント(4.8%)高にとどまったのもNT倍率上昇の一因だ。東証の業種別指数をみると、前年比で上昇したのは「電気機器」や「情報・通信業」など33業種のうち3分の1の11業種で、22業種は昨年末を下回った。コロナ禍を受け、「空運業」や「石油石炭製品」などの下げが目立った。業種別の日経平均では36業種中、約4割の15業種が上昇した。
TOPIX採用銘柄の時価総額の変化(浮動株比率調整後、19年12月30日と20年12月29日を比較)をみると、ハイテク株高で投資収益が改善するとの期待が高まったソフトバンクグループ(SBG、9984)が増加額首位だったほか、キーエンス(6861)とソニー(6758)、エムスリー(2413)など、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要増に恩恵を受けた銘柄の企業価値は増加している。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)や三井住友フィナンシャルグループ(8316)といった銀行株は時価総額の減少が大きかった。主要国・地域の中央銀行が強力な金融緩和策を講じ、低金利環境が長引くと懸念されてTOPIXの重荷となった。JR東海(9022)やキヤノン(7751)など新型コロナでサービス利用が減少したり製品販売が落ち込んだりした銘柄も低迷し、TOPIXを押し下げた。
<TOPIX構成銘柄の時価総額変化> |
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◎増加額の上位5銘柄 | ◎減少額の上位5銘柄 | ||
銘柄名(コード) | 増加額 | 銘柄名(コード) | 減少額 |
SBG (9984) | 4兆1365 | 三菱UFJ (8306) | 1兆4880 |
キーエンス(6861) | 2兆9754 | JR東海 (9022) | 9942 |
ソニー (6758) | 2兆9467 | キヤノン (7751) | 9710 |
エムスリー(2413) | 2兆2295 | 三井住友FG(8316) | 9084 |
日電産 (6594) | 2兆1675 | JR東日本 (9020) | 8302 |
(注)単位は億円、2019年12月30日と2020年12月29日時点を比較、TOPIX算出に使用する浮動株比率調整後の時価総額。 |
<金融用語>
NT倍率とは
NT倍率とは日経平均株価(日経平均)をTOPIX(東証株価指数)で割ったもの。両者の頭文字をとってNT倍率と呼び、両指数間の相対的な強さを示している。 日経平均は東京証券取引所第一部(東証一部)の上場銘柄の中から、日経新聞が選んだ日本を代表する225銘柄の株価合計を除数で調整した平均価格のため、株価の高い値がさ株(ハイテク関連セクターなど)の影響が強い。一方、TOPIXは東証一部全上場銘柄の時価総額による加重平均で計算されるため、時価総額の大きい銘柄(内需セクターなど)の影響を受けやすい。そのため、ハイテク関連セクターの株価が内需セクターよりも上昇するとNT倍率が上がり、内需セクターの株価がハイテク関連セクターより上昇するとNT倍率が下がる。 なお、日米間の株価乖離を見る指数にS&P500種株価指数(S&P500)をTOPIXで割って算出する「ST倍率」がある。