2020年12月22日、資産運用を自動化したロボアドバイザーを開発・提供するフィンテック企業、ウェルスナビ(7342)が東証マザーズに新規上場した。公募価格1150円に対して、3000円前後の株価で取引されている。投資家の期待は高いようだ。
ウェルスナビは広告宣伝費が先行し、上場するまで赤字続きだった。預かり資産と営業収益はともに順調に増えているが、安定した利益の計上には更なる成長が必要になる。
預かり資産4500億円が必要
ウェルスナビの事業基盤である預かり資産の残高は2892億円(2020年9月末時点)で、対前年同期比66%増と急伸している。利用する運用者数も同40%と高い伸びを維持し、営業収益の大半を占める受入手数料が増えて大幅な増収となった。
一方で、現状では費用が先行し赤字が続いている。20年12月期の業績計画は、営業収益が前の期比56%増の24億円、最終損益は12億円の赤字(前の期は20億円の赤字)だ。認知度を高めるための広告宣伝費が大部分を占め、収益を圧迫している。ただ、広告宣伝費はおおむね巡航速度に入ったとみられ、ウェルスナビ側も広告宣伝費を除けば黒字化したと説明する。
■ウェルスナビの業績
出所:会社資料により日本知財総合研究所作成
広告宣伝費は年間10億円程度が必要とみられる。その他を含めた費用は約25億円だ。ウェルスナビの場合、受入手数料の中からレベニューシェアや取引連動費などの変動費的な費用が30%程度かかるため、安定して黒字を達成するのに必要な営業収益は約36億円と試算できる。その場合、必要な預かり資産は4500億円程度になる。
特許価値では差がつきにくい
特許価値を評価する「KKスコア」を使って分析すると、ウェルスナビはロボアドバイザーの特許価値で首位だった。2位に米国ロボアドバイザーの大手の「One Tap BUY」が続く。ただ、上位10社をみても、取り立てて有力な企業は見当たらない。特許価値から見る限り、ウェルスナビの優位性はしばらく続きそうだ。
■ロボアドバイザーの特許価値ランキング
出所:PatentSQUAREにより日本知財総合研究所作成
ただ、ウェルスナビの特許も2017年に登録された4件のみで、その後は登録されていない。ロボアド業界全体として特許出願が低調なのは、二つの要因が考えられる。まず、資産の運用方針は金融資産の過去のデータと顧客の属性から決まるため、新規性を訴えにくく、特許が認められにくい。もう一つは顧客の要望に合わせて、常に細かなプログラムの改良が続く。特許を申請する時間的な余裕は乏しいだろう。
■ロボアドバイザーに係る特許登録件数推移
出所:PatentSQUAREにより日本知財総合研究所作成
将来的にロボアド業界は、多額の広告宣伝費をかけて顧客を開拓しつつ、手数料率の引き下げ競争も進むだろう。かつてインターネット証券がたどったように、生き残りに向けた体力勝負となる可能性が高い。ウェルスナビが勝ち残るには、特許の優位性があるうちに安定した市場シェアを確保する迅速な経営戦略が必要になりそうだ。
(2021年1月13日)
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