【日経QUICKニュース(NQN) 須永太一朗】米国の投資適格社債を組み入れる上場投資信託(ETF)の価格下落が目立っている。バイデン次期政権の経済対策への期待から投資家がリスクを取る姿勢を強め、株式に資金が向かっているためだ。米長期金利の上昇(債券価格の下落)で投資妙味が増した米国債に資金を振り向ける動きもある。一方、低格付けの社債を組み入れたETF価格の落ち込みは足元で相対的に小さく、社債市場で選別もみられる。
■薄れる投資妙味
代表的な投資適格社債ETFの1つ、「iシェアーズ・iBoxxドル建て投資適格社債」(LQD)の価格は12日に一時134ドル台後半と、約2カ月ぶりの安値を付けた。QUICK・ファクトセットによると、1月4~8日の同ETFへの資金流入額は、昨年末にあたる前の週から8割減った。
米ジョージア州での連邦議会上院の決選投票を民主党が制し、同党のバイデン次期政権のもとで大規模な経済対策が打ち出されるとの期待が金融・資本市場で高まっている。バイデン氏は14日、家計への現金給付の増額などを含む数兆ドル規模の経済対策を公表する方針だ。米ダウ工業株30種平均が最高値圏で推移するなど、リスク資産とされる株式に資金が向かっている。
バイデン次期政権の経済対策は国債増発を伴い、米景気の回復を後押しするとの見方から、米長期金利も上昇基調が続く。指標である10年物国債の利回りは12日に一時1.18%と、昨年3月以来の高さになった。「利回りでみた投資適格社債の魅力が薄れ、資金が米国債に向かっている面もある」(マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔氏)という。米連邦準備理事会(FRB)が新型コロナウイルス影響の対応で導入した社債購入を昨年末に打ち切った影響も大きい。
■低格付け社債は底堅く
米低格付け社債の代表的なETFの1つ、「iシェアーズ・iBoxxドル建てハイイールド社債」(HYG)も12日に一時3週間ぶりの安値を付けた。しかし、価格はここ半年で6%高と、同期間にほぼ横ばいの投資適格債ETFに比べると堅調だ。相対的に高い利回りを求める資金が、引き続き低格付け債に向かっている。
もっとも、低格付け債の先行きには懸念の声もある。大和証券の瀧文雄氏は「エネルギー関連や消費財などでデフォルト(債務不履行)の動きが広がれば、ハイイールド債の売り圧力が強まる」とみる。バイデン次期政権の経済対策などで、米景気をどこまで支えられるかが米社債市場の行方を左右しそうだ。