【日経QUICKニュース(NQN) 小国裕梨恵、尾崎也弥】新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「ウィズコロナ」生活は2年目に突入しようとしている。テレワークにはじまり、オンラインコンサートにオンライン帰省と、新しい生活様式もすっかり板についた人は多いだろう。それと引きかえに、立ちはだかるのは運動不足という大敵だ。さらに最近は正月太りも気になる季節。そんななか市場でじわじわ注目を集めているのが健康関連株だ。ヤーマンや米ペロトンなどは人々の高まる健康需要を獲得し、株価上昇につながっている。
運動といえば連想されるのはジムだが、いまは人との接触回避が求められ、積極的に通いにくいという声も聞かれる。会員制フィットネスクラブのセントラルスポーツ(4801)の最近の株価は軟調だ。スポーツクラブ大手のルネサンス(2378)も2020年2月につけた昨年来高値からは半値程度に沈む。そこでいま人気を集めているのは家での運動やマラソンといった手軽にできる運動だ。
※セントラルスポーツ、ルネサンスの株価と日経平均株価の相対チャート。(2019年末を100として指数化)
■美顔器だけでないヤーマン
美容機器の需要の増加で注目の的となったヤーマン(6630)は、健康機器メーカーとしても頭角を現す。振動トレーニングマシン「スイングビート」は家で過ごす時間の長期化を受けて需要が増えているようだ。
株価は20年12月に2018年6月以来、約2年半ぶりの高値を付けた。同社IR担当は「肌の露出が比較的少ない秋と冬は例年、ムダ毛ケアやボディーケア商品(スイングビート含む)は売れにくいが、今年は足の長い商品となっている印象だ」と話す。身体を動かす機会が減ったことで「健康志向が高まり、50代以上の世代に対しても好調だ」(IR担当)という。
※ヤーマンの株価推移
■冬の運動にマラソン、アシックスに注目
アシックス(7936)の株価は20年12月に2017年1月以来、約3年11カ月ぶりの高値を付けた。ランニングシューズなどの需要増加期待が一因とみられている。市場でも「密を避けながら自分のペースで身体を動かせるため、ランニングは人々の健康志向を満たすのにぴったり」(岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部部長)との声が聞かれる。
※アシックスの株価推移
東京五輪・パラリンピックの開催を巡る先行き不透明感もあり株価は足元でやや調整気味だ。ただ、有沢氏は株価が再評価される可能性は十分あるとも指摘する。「盛んなランニング需要を追い風に電子商取引(EC)販売が好調なだけでなく、販管費の抑制による効果も出てきそうで、20年12月期の決算発表では業績の回復力の強さを確認できるのではないか」と話していた。
■米ペロトン躍進、サブスク型で会員増
智剣・Oskarグループの大川智宏主席ストラテジストは米国での在宅運動需要の強さに注目する。代表格はフィットネスバイクのペロトン・インタラクティブ(@PTON/U)だ。20年末には同業のプリコーを買収すると発表。成長期待が高まり、堅調さが続く。ペロトンはユーザーが有料の動画レッスンを同社のバイクのディスプレーなどで見ながら体を鍛えられるサブスクリプション(継続課金)型サービスも手掛け、会員数は大きく増加している。バイクの価格だけで日本円にして20万円以上と、安価とは言いにくい。それでも販売を伸ばしているのは、グローバルなポテンシャルの高さを示唆している。
※米ペロトンの株価推移
米国に限らず「日本は世界でも有数のフィットネス大国。コロナ禍ではジムでの密のリスクは高いので、家で過ごす時間が長くなるなか足腰が弱ると懸念される高齢者を中心に在宅での運動の需要はありそうだ」と大川氏は話す。
コロナをきっかけに住環境など生活の質を高めることにお金をかける人は昨年から増えている。長引くウィズコロナ生活を乗り越えるために、今年は健康関連が脚光を浴びる機会がますます増えそうな予感だ。