近年、経営指標として投下資本利益率(ROIC=Return on Invested Capital)が注目されている。ROICは税引後利益を投下資本(=Capital、有利子不負債+株主資本)で割って計算する。使ったお金に対して、どれだけの利益を得たかを示す効率性の指標だ。
一般にROICはWACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)を上回る必要があるとされている。調達したお金にかかるコストより、稼ぎ出す利益の方が多ければ、企業は成長していくからだ。加重平均資本コストは、有利子負債利子率と株主資本コストの加重平均値で計算する。間接金融と直接金融を合計したコストだ。
研究開発投資が高ROEに
QUICKのデータをもとに、金融を除く上場企業の直近決算におけるROICと有形固定資産回転率、研究開発費回転率、ROEを計算した。ROIC、有形固定資産回転率、研究開発費回転率は以下のように計算した。
・ROIC=純利益÷有利子負債と純資産
・有形固定資産回転率=売上高か営業収益÷有形固定資産
・研究開発費回転率=売上高か営業収益÷研究開発費
特許などの知的財産が含まれるのは無形資産で、それを生み出す原資は研究開発費だ。工場や店舗などの有形固定資産は毎年、減価償却される。これにより設備投資は長期で見れば分散される。一方で研究開発費は全額がその期に費用計上されるため、利益を圧迫しやすい。しかし、実際にはROICが高い企業ほど有形固定資産への依存度が低く、研究開発投資に積極的だった。つまり無形資産経営が優位だった。
知財がどれだけ企業収益に影響しているのかを調べるため、研究開発費を計上している企業のなかで、ROIC上位20社をリストアップした。するとROICの平均値は30%と、上場企業平均の7%を大きく上回った。ROEの平均値も41%と極めて高い。有形固定資産回転率も39.9回と全平均の29.3回を大きく上回っている。これは設備投資の負担が相対的に小さく、費用を抑えられていることが要因と考える。
■研究開発費を計上するROIC上位20社と全体の経営指標
出所:QUICKデータにもとづき日本知財総合研究所作成
一方で、ROIC上位20社の研究開発費回転率は251.3回と全平均の843.3倍の3分の1以下だった。売り上げに占める研究開発費が相対的に多いことを示す。回転率が2ケタの企業もあり、積極的な研究開発投資が利益に結びついているようだ。
■研究開発費の計上があるROIC上位20社
出所:QUICKデータにもとづき日本知財総合研究所作成
有形固定資産や研究開発費は、他社との差別化に向けた戦略的投資だ。これらの投資を惜しむと、一時的には成長できても将来的に資本や価格競争の体力勝負になる可能性が高い。研究開発投資を積極的に行いつつ高いROICを維持する企業は、持続的な成長の期待が高いといえそうだ。
(2021年1月26日)。
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