【NQNニューヨーク 古江敦子】2月9日のニューヨーク債券市場で10年物国債相場は9営業日ぶりに上昇し、利回りは0.01%低い(価格は高い)1.16%で終えた。利回り上昇を促したのは米政権による1.9兆ドルの追加経済対策で、これには「ばらまき財政」との批判も出てきている。ワクチン普及で米景気の回復予想が広がる中、巨額支援策の必要性の是非が問われているが、米政府による「感染第4波への保険」との見方もある。
■米国のワクチン接種が加速
最悪の新型コロナウイルス感染地帯となったカリフォルニア州サンタクララ地区で9日、NFLチームのフォーティナイナーズの本拠地であるリーバイススタジアムがワクチン接種会場としてオープンした。ニューヨーク州では5日にヤンキースタジアムが接種会場となり、全米でワクチン接種が本格化し始めた。バンク・オブ・アメリカの推計によると米国でのワクチン接種は前週に1日当たり200万以上と1月下旬(130万程度)から加速している。ファンドストラットの最新の調べでは全人口の9.2%が少なくとも1回の接種を受けているという。
米国では2月に入り、急増した感染者、死者、入院患者がそろって減少基調にある。だが、米政府への助言機関である保健指標評価研究所(IHME)は「感染力の強い変異ウイルス、ワクチン接種による行動自粛の緩みなどから、春先にも感染が再拡大する最悪のシナリオが予想される」と指摘し、昨年の春、夏、今年1月に続く第4波を警戒する。ワクチン接種は進むが、全人口の75%が接種しなければ感染をとどめる集団免疫を達成できないとされる。バイデン大統領は7日「今夏の終わりまでに集団免疫を達成するのは難しそうだ」と述べ、慎重だった。
■米金利「年末時点でも1.50%程度」
「米財政の先行きを考えると、危険なほど規模が大きい」(アクション・エコノミクスのキム・ルパート氏)とも言われる追加経済対策には、コロナ禍克服への長い道のり、雇用など景気全般の不透明感への保険が含まれるともいえる。パンセオン・マクロエコノミクスのイアン・シェファードソン氏もそう判断する1人で「規模を抑えた支援策では、夏までに景気回復が進まなかった場合にさらに追加経済対策が必要になる」と話す。
もっとも、米長期債相場は感染「第4波」への警戒よりも、目先は追加経済対策による米景気拡大やインフレ進行への観測が勝り、利回りは長期的な上昇基調にある。そのペースを巡っては、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和が長く続く見通しから「年末時点でも1.50%程度」(オックスフォード・エコノミクスのジョン・キャナバン氏)と、緩やかな上昇を見込む声が多い。
10日は1月の米消費者物価指数が発表される。ウォール・ストリート・ジャーナル紙がとりまとめた市場予想では、食品・エネルギーを除くコア指数が前年同月比1.5%上昇と前月(1.6%上昇)に比べやや低下する見通しだ。前週に発表された1月の雇用統計の低調さと同様に、追加経済対策を後押しする内容になるのかどうか、市場の注目を集めそうだ。
<金融用語>
FRBとは
FRBとは、Federal Reserve Boardの略称。FRBは、FRS(連邦準備制度)の構成機関の一つである。米国の金融政策策定にあたる理事会である。連邦準備理事会という。 FRBが開く金融政策の最高意思決定機関にFOMCがある。FOMCは、FRBの理事7名や地区ごとの連邦準備銀行(FRB)総裁5名で構成されており、米国の金融政策やFFレートの誘導目標を決定する。