(初回公開日2022年2月1日15:30)
【QUICK Money World 辰巳 華世】宇宙ビジネスが広がっています。2021年は英ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏や米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が有人宇宙飛行に成功するなど「宇宙旅行」が注目されました。今回は、世界中で進む宇宙関連の研究と開発について、宇宙関連銘柄とは何か、宇宙関連銘柄が注目される理由、宇宙関連の注目銘柄、宇宙関連銘柄の今後について紹介します。
世界中で進む宇宙関連の研究と開発
宇宙産業の市場規模は世界中で広がっています。米モルガン・スタンレーの市場予測によると、宇宙産業の世界市場は2040年に現在の約3倍超の1.1兆ドル(約121兆円)超になるとの見通しです。
宇宙産業と聞くと、ロケットの開発や発射、有名な創業者たちが宇宙への飛行に成功するなど「宇宙旅行」をイメージする人が多いと思います。ロケットや宇宙旅行は、どことなく今の私たちの生活からはかけ離れた夢の世界の様な感じがします。しかし、実は宇宙ビジネスの幅は広く私たちの生活に密接に関係している部分も多々あります。人工衛星の開発や打ち上げ、その衛星から得た宇宙データを活用するビジネスが広がっています。テレビ放送、天気予報、通信事業、位置情報の活用、地球規模での温室効果ガスの測定など私たちの生活に密着した分野でも宇宙ビジネスは拡大しています。
※生活に密接に関係する宇宙産業(出所:内閣府資料)
日本においても宇宙産業に参入する企業が増加しています。宇宙は未開拓な分野であるうえ、今後の成長性が期待されていることもありロケットや衛星、そして宇宙データなど宇宙に関わる分野での事業化を目指す企業が相次いでいます。京セラや清水建設など大手企業が宇宙事業を専門に手掛ける企業に出資し宇宙ビジネスに参入する構図も相次いでいます。
宇宙ビジネスは米国で最も進んでいます。宇宙分野は軍事技術と密接につながっている部分が多く軍需や官需も大きい米国では、ロケット、衛星の開発や打ち上げ、周辺機器の設計などあらゆる宇宙分野で先行しています。社団法人日本航空宇宙工業会の平成21年度宇宙産業データブックによると宇宙機器産業の売上高比較で米国は約4兆円に対して日本は2591億円と大きく差が開いています。
※各国の航空宇宙工業生産(売上)高の推移(出所:日本航空宇宙工業会・航空宇宙産業データベース)
これまで日本の宇宙産業は官需での需要が大半で市場規模が小さかったです。今後日本でも宇宙ビジネスが広がっていくと思われます。衛星の小型化の技術や、宇宙空間で精巧な動きができるロボット技術など日本に強みがある分野で海外への技術提供が期待されています。
宇宙関連銘柄とは
宇宙関連銘柄は多岐に渡ります。まずは、宇宙産業機器を扱う企業。ロケットや人工衛星など宇宙機器を開発し製造する企業などです。ロケットの部品、モーター、素材、燃料の開発に関連する企業も関連企業です。打ち上げた人工衛星などからの宇宙データを活用する企業も関連銘柄です。位置情報や、GPSなどを活用したデータサービス開発などに取り組んでいます。宇宙旅行関連の企業や宇宙に散らばるごみ(スペースデブリ)の削減に取り組む企業も宇宙関連です。また、宇宙事業を展開するための新たな保険やサイバーセキュリティ分野の発展も考えられます。
<テーマ株> ・スペースデブリ関連銘柄 |
宇宙関連銘柄が注目される理由とは
宇宙は現在も不明なことが多い未知の世界であり、今後も長期的に研究が進む分野です。地球以外の星で生活できるような開発が進めば、人類の進歩にも繋がります。
また、ビジネスの世界では宇宙から得られるデータの活用に注目が集まっています。ビッグデータなどデータの活用は現代ビジネスを展開する上でとても重要です。地球上で集められたデータに加え、宇宙から得られるデータを組み合わせることで新しいサービスに繋がる可能性があります。技術開発が進むあらゆるモノがネットにつながるIoTやAI(人工知能)などのインターネット通信と結び付いて今後も大きく成長が期待される分野です。
<関連記事> ・注目テーマ「人工知能」 AI開発企業だけじゃない!関連銘柄の本命は |
宇宙データの利用などビジネスでの活用が期待されていることもあり、世界中の国や企業が宇宙産業に参入しています。民間企業での研究や開発、商業化の流れが進む中、国や政府は、自ら宇宙開発を進めるのではなく、企業の技術やサービスを購入するという流れになっていくことが考えられます。
宇宙関連の注目銘柄
宇宙関連の注目企業では、ロケットや宇宙ステーションなどの開発を手掛ける三菱重工業(7011)やIHI(7013 )、ロケット発射の制御ソフト技術のセック(3741)、ロケットに必要な部品などを製造する日本航空電子工業(6807)などがあります。超小型人工衛星を提供するキヤノン電子(7739)、デブリ除去専用の小型衛星を開発した川崎重工業(7012) 、宇宙環境の試験装置をつくる「日本酸素HD(4091)」、宇宙向けプリント配線板をつくる「日本アビオニクス(6946)」なども宇宙関連銘柄です。
アイネット(9600)は、宇宙・人工衛星事業を手掛けています。小惑星探査機「はやぶさ」などJAXAのプロジェクトにも参加しています。さくらインターネット(3778)は、クラウド上で衛星データの分析ができるシステムの開発をしています。このほか、衛星放送を中心に宇宙事業を手がけるスカパーJSATホールディングス(HD、9412)も宇宙関連銘柄です。
メディア企業向けのネットサービス運営支援を手掛けるINCLUSIVE(7078)は、堀江貴文氏が出資するロケット開発ベンチャー企業のインターステラテクノロジズと資本提携し注目を集めた宇宙開発関連銘柄です。
このほか、三井物産(8031)やANAホールディングス(9202)など大手企業も宇宙ビジネスに乗り出しています。三井物産は、民間宇宙ステーション開発の米アクシオム・スペースと資本提携しました。ANAとエイチ・アイ・エス(9603)は、有人宇宙旅行を目指すPSエアロスペースに出資。大林組(1802)は、2050年の完成を想定して宇宙エレベーター建設の構想を持っています。
宇宙関連銘柄の今後
内閣府は「宇宙産業ビジョン2030」を2017年に公表しており、市場規模は2030年代に2020年の約2倍となる約2.4兆円に伸ばす目標をたてています。ロケットや衛星といった宇宙産業機器の分野だけでなく、衛星から得られる宇宙データを活用したビジネスを進めていく方針です。
※政府は国内宇宙産業の市場規模倍増を目指す(出所:内閣府資料)
あらゆるモノがネットにつながるIoTやAI(人工知能)、そしてインターネット通信と宇宙データを絡めたビジネスの広がりが期待されています。今後は既存の宇宙関連企業だけでなく新たに宇宙事業に参入する企業の動向にも注目が集まります。
特に宇宙産業を牽引する米国の動向は注目されます。先進国で展開されるビジネスはインターネットが前提としてありますが、発展途上国など世界では30億人以上が未だにインターネットに繋がらない環境にあると言われています。その未開拓のユーザーを開拓しようと世界をつなぐインターネット事業を目指す動きがあります。宇宙事業会社の米スペースXは宇宙や上空に多数の人工衛星を打ち上げ張り巡らせることで、世界中にインターネット利用環境を整える事業を開始すると表明しています。
日本では、KDDIが米スペースXとの提携を発表しました。地上設備の整備が整っていない過疎地などでのサービスを使いやすくします。両社は実証実験を開始しており、2022年中にも商用化する方針です。
<関連記事> ・宇宙旅行到来をESGで占う 防衛への関与や環境負荷が焦点(アラベスクS-Ray) |
まとめ
宇宙関連のビジネスは今後も大きな成長が見込まれます。国内での開発、海外展開の動向などに注目し成長する企業を選定してみましょう。宇宙関連企業を集めた投資信託も各社から登場しています。自分で個別銘柄を決められない時は、宇宙関連の投資信託に投資するのも一つの手です。
この他にも、QUICK Money Worldは金融市場の関係者が読んでいるニュースが充実。マーケット情報はもちろん、金融政策、経済情報を幅広く掲載しています。会員登録して、プロが見ているニュースをあなたも!詳しくはこちら ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは