【QUICK Money World 片岡 奈美】皆さんは株式投資に必要な情報をどうやって入手していますか?新聞、テレビのニュース、はたまたインターネットの情報サイト…。QUICK Money Worldも含め「ニュース速報」といった類のものは皆さんよく目にされ、活用もされていると思います。
ではそういった記事の元にもなる「適時開示情報」はいかがでしょうか。難しそう? いえいえ、少しのコツをつかめば、速報ニュースがお手元に届くよりも早く、投資判断を下すことも可能かもしれません。ここでは、適時開示情報とは何か、どういったことがわかり、株価にどう影響してくるのかについて紹介していきます。
そもそも「適時開示」とは
投資家の皆さんが売り買いされている株式は、証券取引所に「上場」されていますよね。ここでは詳しい説明は省きますが、株式を上場するためには様々な審査があり、一定の基準を満たした企業のみが上場会社として証券取引所で株式を公開することになります。
株式はいったん公開して終わりではありません。投資家が継続して安心して売り買いをするためには、市場は公正かつ健全でなければ困ってしまいます。それらを担保するために、上場企業には金融商品取引法に基づく法定開示制度と、証券取引所の規則に基づく適時開示制度による情報開示が義務付けられています。
どちらも「開示」とついていますが、よりタイムリーで新鮮な情報が得られるのが「適時開示」です。短期的な株式の売買には、適時開示制度で上場会社が投資家に向けて公表する情報により着目していくとよいでしょう。
適時開示情報ってどういうときに公開されるの?
日頃の投資情報収集で、有価証券報告書を目にされたことがあると思います。会社の概況や事業内容、財務諸表など多くの情報が詰め込まれている非常に重要な書類です。ただ、有価証券報告書が提出されるのは、決算期末の3カ月後ごろ。投資家の皆さんはそんなに悠長に決算情報を待っているわけではないですよね。もっと早く、「決算短信」で業績の概要を把握しているはずです。
「決算短信」は、適時開示情報のひとつです。企業によって発表時期は異なりますが、決算の締め日から30~45日後ごろに公表されるもので、経営成績や財務状態、キャッシュフローなどを確認することができます。企業自身による業績予想も記載されています。
もっとも、刻一刻と変わる情勢の中で、企業の予想が良くも悪くも外れていくことはままあります。売上が想定ほどには伸びなかったり、天災で工場がストップしてしまったりといったこともあるでしょう。思わぬヒット商品が利益を大幅に押し上げるなんて嬉しい誤算もあるかもしれません。従来の業績予想から実際の業績に大きな差が生じそうな場合、企業は予想を修正。証券取引所の上場規定では、売上高については上下10%以上(予想の110%以上あるいは90%以下)、営業利益、経常利益、最終利益については上下30%以上(同130%以上あるいは70%以下)、それぞれ乖離する場合には直ちに開示することと定めています。
決算情報開示の詳細については、こちらの記事もご覧ください。
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このほかにも、投資判断に重要な影響を与える会社の業務や運営、業績などに関する情報は具体的な開示が求められます。新たな株式の発行や株式の分割、併合、自己株式の取得、合併などの組織再編といった決定事項のほか、主要株主や筆頭株主の異動、訴訟、災害による損害などの発生事実など、非常に多くの情報を上場企業は適時開示として公表することになっています。株価に大きな影響を与える可能性が高い情報が適時開示情報に詰め込まれているとも言えます。
適時開示情報が株価に与える影響/活用方法
重要な情報が開示されることは分かったけれど、株価に影響を及ぼす情報はほかの方法でも得られるかもしれません。それでも、適時開示がとりわけ注目されるのは、適時開示による情報の公表が基本的には「最も早い」からです。一部報道などで先んじて何らかの情報が出てくることはありますが、企業からの公式発表は適時開示です。
適時開示情報は、証券取引所のホームページ上の「適時開示情報閲覧サービス(TDnet)」から、誰でも無料で見ることができます。確認できるのは開示日を含め31日分です。上場会社が会社情報の開示をする場合は必ずこのシステムを使うよう義務付けられています。公表時刻は決まっていませんが、朝方の8時、9時から夜にかけ、毎正時や30分など、区切りのよい時間に発表されているケースが多いと思います。そのなかで、特に開示件数が多い時間は15時00分です。
なぜなのかは言わずもがなですね。現物株式の立会時間は15時まで。ですので、15時すぎに重要情報を適時開示すれば、当日の株価に影響を与えることなく、投資家の皆さんにじっくり情報を確認してもらうことができるというわけ。そうして内容が吟味された結果、翌日の寄り付きから株価が大幅に上昇あるいは下落――なんてこともありうるのです。
取引時間中に重要な適時開示情報が開示されることも少なくありません。適時開示情報が明らかになるや否や、市場参加者の受け止め次第では、堅調にみえていた株価が乱高下することもあります。相場の方向性を左右しかねない重要な情報だからこそ、広くあまねく、適時開示制度を通じて公表されているともいえます。2011年に巨額の粉飾決算が発覚したオリンパス(7733)や、15年に不正会計問題が表面化した東芝(6502)の事例などは投資家の皆さんも記憶に残っているかと思います。こういった企業の不祥事も、TDnetを通じて直ちに適時開示がされることになっています。企業によっては、同時にウェブサイトなどを通じた発表や記者発表などがされることもあります。投資家の皆さんにとっては「少しでも早く」「正確に」情報を把握し分析することが必要になってくる場面です。
※オリンパスによる粉飾決算事案
※東芝による不正会計事案
とはいえ、個人投資家の皆さんがいつ発表されるともしれない情報を四六時中チェックしていくのは至難の業。全上場企業の情報がTDnetを通じて公表されるのですから、発表が立て込む時間帯には何十件もの適時開示情報が同時に出てきます。その中から興味のある企業の情報だけを瞬時に抜き出して読み込むのは、あまり現実的ではないでしょう。情報収集や確認といった作業にもたついていれば、せっかくの投資チャンスを逃すことにもなりかねません。
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まとめ
適時開示情報は、上場企業の重要情報が最初に世の中に示されるものです。その性質から株式投資に影響のある情報ばかりで、うまく活用できれば新聞などの速報ニュースで報じられるよりも先に情報を得ることも可能です。そもそも、報道されている記事は要点のみをかいつまんで構成されがちですから、関心のある内容であれば適時開示情報を改めて確認することも有益でしょう。ぜひ適時開示情報を株式投資に役立ててみてはいかがでしょうか。
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