米カリフォルニア土産の定番「See’s Candies」(シーズキャンディ)。カナダ人のチョコレート・セールスマンが母親のメアリー・シー氏と1921年にロサンゼルスで開業、世界大恐慌でも生き残り、旅行者だけではなく地元住民にも大人気だ。子供のころから何十年も食べ続けていると想像できるほどシニア世代の「ロイヤルカスタマー」が目立って多い。ウェブサイトによると、1972年1月にウォーレン・バフェット氏と盟友のチャーリー・マンガー氏が買収した。「バフェット氏の最も好きな企業で、バークシャー・ハザウェイ年次総会で好物のシーズキャンディのピーナッツブリトルを株主の前で食べている」と記されている。
「アップルやコカ・コーラなどの大株主であるバフェット氏のドリームビジネスは小さいチョコレート・メーカー」と米ニュース専門サイトのビジネスインサイダーは報じた。「2500万ドル(現在のレートで約33億5000万円)で買収したシーズキャンディの税引き前利益は累計20億ドル(約2680億円)を超える」との2019年株主総会でのバフェット氏の発言を引用、8000%超の投資リターンを生み出したとしている。バフェット氏は、多くの設備投資を必要とせず、業績の安定、質の高い人材、高い商品力を評価していると伝えた。
1930年に米ネブラスカ州オマハ生まれのウォーレン・バフェット氏は92歳。バークシャー・ハザウェイの前身を立ち上げた1956年から67年にわたり投資ビジネスの一線にいる。フォーブスによると、個人資産は16日時点で世界5位の1138億ドル(約15兆2300億円)。親交が深いCNBCのベッキー・クイックさんの3時間に及ぶインタビューで、寿命が1年縮んでもジャンクフード中心の食生活を変えないと笑いながら語った。バフェット氏が座った東京のホテルのソファ横に飲みかけのチェリーコークが映っていた。バフェット氏はインタビューで、日本の商社5社の投資機会がある事実に当初困惑したとしながらも、保有をさらに増やす意向を示した。
バフェット氏の「レア」な日本訪問は米国でも注目を集めた。日本メディアのインタビューを米国メディアが幅広く引用した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、バフェット氏が日経新聞のインタビューで、バークシャー・ハザウェイの日本株投資を増やす意向を示したと報じた。大規模な鉱物とエネルギーの投資ポートフォリオを持つ日本の商社はコモディティ価格上昇の恩恵を受け、バフェット氏が好むバリュー投資にも適している解説した。
フィナンシャル・タイムズ紙は、5大商社しか日本株を保有していないバフェット氏が日本株への追加投資の検討を示唆したことを受け、鉄道株や公益株などバフェット氏が次に投資する可能性がありそうな銘柄を投資家が物色しはじめたとするコラムを掲載した。興味深いのは、日本のプライベートエクイティによる約2兆円の東芝買収の資金提供を模索する可能性があるとバークシャー・ハザウェイ関係者が語ったことだとしている。東芝案件が現実にならなくても、日本はバフェット氏のような投資家を必要としていると主張した。
バフェット氏は傘下のバークシャー・ハザウェイの株主への手紙で過去に何度もシーズキャンディの成功について言及。チョコレート工場での試食や店舗で販売の手伝いをする映像が過去に放送された。日本滞在中に「日本のシーズキャンディ」を見つけたか。世界の投資家が注目している。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。