【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】22日の東京株式市場で珍しい事象が発生した。スタンダード市場に上場するHSHD(8699)が実施を予定していた200万株の自社株買いが成立しなかった。HSHDは自社株買い不成立の理由として「売却株主との認識の相違」と説明した。
HSHDは21日の取引終了後に発行済み株式数(自己株式を除く)の6.4%に当たる200万株を上限とする自社株買いの実施を発表。22日の午前8時45分に東京証券取引所の立会外取引「ToSTNeT(トストネット)3」で買い付けを行う予定だった。東証と証券会社を結ぶ専用システムでは8時45分にどれだけ自社株買いが成立したかが表示される。それが、今回は「0株(取引不成立)」だった。
HSHDは22日11時過ぎに自社株買いの売買が不成立だったと発表。理由として「今回は売却株主との認識の相違により不成立」と説明した。同社は日経QUICKニュース(NQN)の取材に対して「これ以上、説明することはない」と回答した。
自社株買いは「株主から保有株を売りたい」との需要調査に基づいて実施することがある。売り需要が多ければ、取引時間中にその売りが出されると株価が大きく下がるため、それを回避するために自社株買いで対応する。今回はその需要調査の段階で問題が生じていた可能性がある。仮に200万株を1主体の株主が売ると仮定した場合、エイチ・アイ・エス(HIS)創業者の沢田秀雄会長や松井証券など4人程度の大株主に限られる。
興味深かったのは株価の動きだ。22日午前の株式市場ではHSHDは前日比58円(5.5%)高の1110円まで買われた。自社株買い不成立でどちらかといえば売られる印象があるが、立会外取引で買わなかった代わりに「場で買うか、後日に再び立会外取引での自社株買いの実施を発表するとの期待があった」(フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッド)ため、買いが集まったようだ。もっとも、午後は大きく上げ幅を縮小している。
立会外で自社株買いが不成立だったのは22年11月のアールビバン(7523)以来とみられる。NQNの取材に対し、日本取引所グループの広報担当者は「年に1~2回程度しか起きない印象」と回答した。