【QUICK Money World】「流水麺」ブランドで知られる製麺業のシマダヤ(250A)が10月1日に東京証券取引所スタンダード市場に新規上場します。シマダヤはパソコン周辺機器のメルコホールディングス(6676)の完全子会社で、メルコからのスピンオフ(分離・独立)上場となります。メルコが同社の株主にシマダヤ株式を現物配当する形で分離・独立させるため、メルコの株主はシマダヤの株主にもなります。今回はスピンオフについて、仕組みや目的などを紹介します。
■スピンオフとは?
企業の特定の事業部門や子会社を切り離し、独立させることを「スピンオフ」と言います。独立した企業の株式は元の企業の株主に交付されます。
特定の事業部門を切り離す場合は新設分割し、株主に切り離す事業の株式を現物配当します。一方、完全子会社を切り離す場合は完全子会社の株式を現物配当することになります。
シマダヤの場合はメルコの完全子会社ですので後者にあたります。メルコの株主はシマダヤの株式を現物配当として受け取ることができます。
出典:経済産業省ホームページ
■メリットとデメリットは?
スピンオフは企業が事業を再編する手法のひとつです。特定の事業部門や子会社を切り離すスピンオフは、一般的に「経営の独立」「資本の独立」「上場の独立」による企業価値の向上がメリットとして期待されます。
【経営の独立】
元の企業は残った中核事業に専念することが可能になり、一方のスピンオフされた企業は切り離されたことで経営の自由度が高まり、迅速・柔軟な意思決定ができるようになります。
【資本の独立】
スピンオフされた企業は、切り離されたことによって独自の判断で資金調達し、必要な投資に資金を充てることが可能になります。また従来は競合相手だった企業との取引も可能になる場合があります。
【上場の独立】
スピンオフされた企業(事業)のみに関心がある投資家が集まりやすくなります。また多くの産業を抱える複合企業の企業価値が、事業ごとの企業価値の合計よりも小さくなる「コングロマリットディスカウント」の解消にもつながる可能性があります。
一方、デメリットは、経営などの独立と裏返しになります。独立性が高まるということは、元の企業の後ろ盾がなくなることを意味します。スピンオフした企業の経営資源やブランド力などを頼りにできなくなり、経営・財務の基盤が不安定になる場合もあります。また分離・独立によって従業員のモチベーションが上がることもあれば、逆に下がってしまうことも考えられます。
メルコは、スピンオフの目的について、5月13日付のプレスリリースで「当社を取り巻く経営環境・社会の変化が激しい現在の状況を踏まえ、食品事業のシマダヤを当社から分離・独立させ、経営、資本のそれぞれの独立を図ることにより、迅速な事業戦略の実行および、さらなる各事業分野での成長を促進し、それにより長期的な株主価値の最大化を目的とする」と説明しています。
■「スピンオフ税制」導入で税制優遇
スピンオフは税制上の譲渡とみなされるため、従来はスピンオフした企業に対する資産の譲渡益が課税され、株主にも「みなし配当」が課税されていました。機動的な事業再編を促すため、政府は2017年度の税制改正で、譲渡益や配当に対する課税を繰り延べる「スピンオフ税制」を導入しました。
国内適用第1号はフィットネス事業のカーブスホールディングス(7085)です。カラオケ事業を展開するコシダカホールディングス(2157)からスピンオフし、2020年3月2日に東証1部(当時)に新規上場しました。
出典:経済産業省ホームページ
■メルコ株式1株につきシマダヤ株式1株を現物配当、9月26日が権利付き最終売買日
メルコは9月26日時点で同社の株式を保有している株主にメルコ株式1株につきシマダヤ株式1株を現物配当する予定です。メルコの株主は、10月1日からシマダヤの株主にもなります。シマダヤの新規上場に伴う売り出し価格は、9月20日に決まります。仮条件は1620~1880円となっています。
今後の主なスケジュールは下記の通りです。
9月20日(金) | 売り出し価格決定日 |
9月26日(木) | 権利付き最終売買日 |
9月27日(金) | 権利落ち日 |
9月30日(月) | 基準日(権利確定日) |
10月1日(火) | 効力発生日、シマダヤ新規上場日 |