財務省が3日実施した10年物国債の入札は、強い結果となった。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の上昇に伴い、ドルの調達コストが高まったことで、国内金融機関が外債投資を抑えて円債に回帰するとの見方が強まっている。これが2018年度最初の10年債入札での需要の強さにつながった。
償還時期と利率が350回債と同じ「リオープン発行」となった今回の入札は、最低落札価格が100円66銭と市場予想の中央値(100円65銭)を上回った。応札額は7兆4458億円、落札額は1兆7897億円で応札倍率は4.16倍だった。
応札倍率は3月の前回入札での4.53倍を下回った。だが例年、年度初めの入札は前の期末の債券需要が一巡した直後のため、投資意欲が後退する傾向がある。年度初めという同じ時期の応札倍率を振り返ると、今回は14年4月の4.76倍以来、4年ぶりの高水準だった。このため債券市場には「かなり強い結果だった」(国内証券のストラテジスト)との評価があった。
強かった需要の背景には、国内勢が外債投資を控え円債に回帰するとの思惑がある。国内勢による外債投資は、まずドルを調達しなければならず、その際にはLIBORに一定水準を上乗せした金利を払う。2月下旬に1.9%台だったドルのLIBOR3カ月物は現在、2.3%台に急上昇している。外債投資のコスト上昇が、円債への回帰を促すという読みにつながっている。
減税により、海外で抱えるドル預金を米国内に戻す米国企業が増えている。この結果、海外の金融機関は減ったドル預金を穴埋めするために短期金融市場でのドル調達を増やしている。こうした動きがLIBORを押し上げている。
財務省は18年度、通常入札による国債の市中発行額を約7兆円減らす計画だ。供給が減る一方で、日銀による買い入れオペは続いている。需給の引き締まりが債券相場を支える(利回り上昇を抑える)との見方は多い。長期金利の指標である10年債利回りは3日の入札後、前日比0.020%低い0.025%まで低下し3月26日に付けた今年の最低水準0.020%が近づいている。債券市場では「今後も利回り低下が見込まれるなら、今の水準でも魅力的」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)との声があった。
【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】
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