買い戻しによって相場は復調気味だが、グローバルの投資家心理は中期的に冷え込む一方のようだ。
28日付でステート・ストリートが公表した11月の投資家信頼感指数は前月から1.7ポイント悪化し82.7となった。悪化は4ヵ月連続となり、指数自体は2012年12月以来およそ6年ぶりの低水準に沈んだ。
同指数は100が中立なだけに「投資家はリスクアセットのポジション調整を強烈に進めている最中」(調査を担当するケネス・フルート氏)と解釈できるようだ。低下を始めた5月以降、本格化したのがまさに米中貿易戦争だった。トランプ政権は4月ごろにリストの作成にとりかかり、6月には制裁第一弾を決定。7月上旬に発動した。さらに追加措置を断続的に決定するなどエスカレートするばかりだ。何らかの歯止めがかかるまで投資家としても身動きが取れない。
ただ、地域別の投資家信頼感指数では違った景色が見える。悪化が目立ったのは北米。むしろ「アジア太平洋地域の指数が改善したのは驚き」(フルート氏)と言える。
アジア地域の投資家心理がそれほど悪化していない理由はどこにあるのだろうか。1つのヒントになりそうなのが、野村証券が28日付で公表した「アジアにおいて『漁夫の利』を得る可能性のある経済(詳細版)」と題するレポートか。ざっくり言えば「米中貿易摩擦はマイナスばかりではない」とのシナリオの証明を試みたものだ。
レポートでは野村独自の「野村輸入代替指数(NISI)を考案」。5つの項目について指標化したものを加重平均し、どのアジア諸国のどのセクターが米中による輸入先変更の恩恵を受けやすいかを指標化したものだという。詳細はレポート本文を確認いただきたいが、分析では「恩恵を最も受けやすいのはマレーシアで、2位以下に大差をつけている。2位以下は、日本、パキスタン、タイ、フィリピンと続く。逆に恩恵を最も受けにくいのはバングラデシュ、インド、韓国である。詳細にみていくと、ASEAN諸国の多くが米国による対中関税の恩恵を、パキスタン、日本、マレーシアが中国による対米関税の恩恵を、それぞれ受けやすいことが分かった」としている。
このあたりにアジア地域の投資家のセンチメントが相対的にしっかりしている要因の1つがあるかもしれない。不透明感のみならず強弱感も交錯するグローバル市場。方向感を見極めるにはまだ時間がかかる。(岩切清司)
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