QUICKコメントチーム=根岸てるみ、写真=Jun Sato/WireImage
2020年東京五輪の開会式まで、きょうでちょう1年。今年9月にはラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会も控えており、相次ぐ大きなイベントをきっかけに政府はスポーツを成長産業にしたいと目論む。広告宣伝や既存ビジネスとの相乗効果を狙い、ソフトバンクグループ(9984)や楽天(4755)といったIT大手はスポーツ業界に食指を動かしている。
政府はスポーツの市場規模を25年に15兆円(2012年時点5.5兆円)程度に拡大させたい考え。スポーツといっても、靴やウエアを扱うスポーツ用品からトレーニングジム、さらにはeスポーツと分野は幅広いが、野球やサッカーといったプロスポーツ市場の伸び率が大きくなるとの試算がある。
そんな中でにわかに注目を浴びるのがバスケットボールだ。八村塁選手がプロバスケットボールNBAで日本人初のドラフト1巡指名を受けたため、メディアで報じられる機会が増えた。日清食品ホールディングス(HD、2897)は八村選手とスポンサー契約を結んだ。
日清食品ホールディングスは八村選手を起用したネットコマーシャルを配信するなどして海外でのブランド発信を強化する(22日の記者会見)
スポーツチームの運営にスポンサーは欠かせない存在。最近はIT大手が名乗りを上げるケースが目立つが、バスケットについては現在のところソフトバンクと楽天の参入にとどまる。ソフトバンクはBリーグのトップパートナー。楽天はNBAのチームとパートナー契約を結んでいるほか、動画配信サービス「Rakuten TV」はNBAに関する国内配信を握っている。
だがうま味があるかというと、難しい面がある。スポンサー契約料は公開されないことが多いが、米スポーツ専門局ESPNによると、楽天はNBAのチームと年2000万ドル(約22億円)で3年間契約したという。そのほか、スペインFCバルセロナとの契約金は年5500万ユーロ(約65億円)とされ、国内テニストーナメントのパートナーシップ、プロ野球チーム東北楽天ゴールデンイーグルスの運営を合わせると相当な額に膨らむ。半面、楽天のプロ野球球団の運営などを手掛けるコミュニケーションズ&スポーツ部門は苦戦が続く。2018年12月期通期の営業損益は、120億円の赤字だった。海外の著名なスポーツチームとのスポンサー契約で知名度を一気に広めて売上を拡大し、打倒アマゾン(@AMZN/U)を掲げたものの、現実は厳しいようだ。
ソフトバンクについては年30億円、4年で120億円をBリーグに投じたといわれる。大きなスポーツイベントの開催日が近づくにつれ、株式市場でスポンサー企業などが注目される機会が増えそうだが、投資効果をしっかり見極める必要があるだろう。
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