QUICKコメントチーム=丹下智博
2010年前後の欧州債務危機で世界を怯えさせた「PIGS」も、すっかり丸くなってしまった。時の流れと世界の変化を感じてしまう金利水準だ。
29日の欧州債券市場では、ギリシャの10年国債利回りが過去最低を更新し1.54%をつけた。危機対応で15年6月に導入した大規模な資本規制の一部がまだ残っていたが、9月1日に全面解除されると26日に表明されたことが好感された。プラス金利が残っているギリシャ国債に利回り狩りの買いが向かっている形だ。米国債利回り(1.497%)とあまり変わらない。
■ドイツ・イタリア・ギリシャ・ポルトガル・スペインの10年国債利回り
1%を割り込んでいたイタリア10年国債もさらに買い進まれ、一時0.93%をつけ過去最低を更新した。イタリア大統領がコンテ首相に組閣を命じたことで、解散総選挙の可能性が後退した。総選挙によるバラマキ(財政拡張)への警戒感からイタリア国債の買いに慎重な見方もあったが、イタリア政局のリスクが低下したと受け止められたようだ。
PIGSは当時、財政状態に不安があるとされた4ヵ国の頭文字だ。現在、ギリシャ、イタリア以外ではポルトガルの10年国債利回りが0.116%、スペインが0.093%にとどまる。危機時にギリシャ国債は10%超、イタリアとポルトガルが7%程度、スペインが5%台だった。
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