知らないうちに貯まったポイントで、ほったらかしの資産運用――。クレジットカード会社大手のクレディセゾン(8253)が提供する「ポイント運用サービス」が新しい資産形成のカタチを生み出しつつある。
ポイント運用サービスは、セゾンカードやUCカードを利用するなどして得た「永久不滅ポイント」を使って気軽に資産運用を疑似体験できる仕組みだ。利用者はアクティブコースかバランスコースのどちらかを選択し、その運用成果によってポイントが日々増減する。2016年12月のサービス開始から1年3カ月あまりで利用者数は12万人にのぼり、永久不滅ポイントの交換先ランキングで上位に顔を出すなど盛り上がっている。
今年3月14日からは、より景気の変動を感じやすい日米の代表的な株価指数に連動する「日本株(TOPIX)コース」と「アメリカ株(VOO)コース」の2つを追加し、「つみたて機能」を新たに搭載した。この2つのコースは、サービス開始からわずか2週間あまりで利用者が1万人を超え、関心の高さがうかがえる。
今春以降は株価連動型ポイント運用システムを手掛けるストックポイント(東京・千代田)と連携し、実在する企業の株価に連動する「株式コース」も開始する予定だ。株式1株の価格に相当するポイント数になると、その銘柄に交換することが可能になるという。
ポイント運用サービスの狙いや今後の展開などについて、同サービスの発案者である美好琢磨氏 、同社で一緒に資産運用ビジネスを推進している橋村奈緒子氏に話を聞いた。
写真左:橋村奈緒子氏(経営企画部グループ戦略室) 写真右:美好琢磨氏(アセット・マネジメント・ビジネス・オフィサー)
■「世界初の試み」、長期投資への思いが根底に
――新しい試みとしてのポイント運用が人気です。
「世界で初の試みだと思います。当社は証券会社ではないので、お金による有価証券の購入仲介はできません。あくまでポイントという『おまけ』を株式相場と連動するものに交換し、資産運用を疑似体験してもらうというサービスです。関係官庁に相談しましたが、永久不滅ポイントはお金で購入できないため、(商品券やプリペイドカードといった)前払式支払手段にも該当しません」
――発案の背景や思いなどは。
「永久不滅ポイントの引当金は昨年末時点で1000億円を超えており、有効期限がないためアイテムへの交換などをせずに貯め続けている人が多いという認識がありました。ポイントで何か楽しいことをしていただきたい、日々の暮らしに彩りを添えたいと考えていたとき、私がもともと資産運用に関わる仕事をしていたこともあり、ポイントで気軽に運用できる仕組みを思いつきました。生活を豊かにすることの1つに個人の資産形成があると思っています」
「日本に長期投資を根付かせたい、という思いが根底にあります。若年層や女性など投資になじみのない人は、資産運用をしようと思っても、いきなり『投資信託』とか『ロボットアドバイザー』などと言われると難しく感じる人が多いのではないでしょうか。ポイントというおまけで楽しみながら長期運用を体験する。そこで生まれた体験が実際の投資へつながっていけばと思っています」
■「投資教育」とは言わない、「楽しさ」を重視
――利用者数増加への手ごたえは。
「このサービスを企画・立案した時点の目標数は早い段階でクリアしました。想定していた以上に皆様の関心が高いですね。一般的なネット証券のユーザーと比べ、若年層と女性の比率が高いことには驚いています」
「大々的に『投資教育』といった言葉は使っていません。あくまでちょっとしたお得感、プラスアルファを味わう感覚で運用を始めてみる。楽しいことだったらやってみたい、そのような気持ちが長期投資を感じてもらうきっかけを作ってくれていると思います」
――投資信託でよく議論になる諸費用や税金についてはどうお考えですか。
「日本の制度上、ポイントは非課税です。また弊社はポイント運用の申込分をヘッジ(損失回避)で運用していますが、お客様の体験としては、あくまでポイントが指数や運用結果に連動して増減するだけです」
――積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)は意識されましたか。
「もちろん意識して作りました。『つみたて』を平仮名にしたり、新たに追加した2コースもつみたてNISAの対象指数に基づいて運用するものを採用したりとできる限り近づけました」
「日本株(TOPIX)コースとアメリカ株(VOO)コースを追加したのは、株式相場を身近に感じやすいと考えたからです。米国の大統領の発言だけでも株価が動くのだな、といったことを実際に感じてもらえればうれしいですね」
■ポイント運用、他社との連携も視野
――クレジットカード会社が資産運用ビジネスを展開した背景は。
「クレジットカードの取扱高は個人消費動向の影響を受けるため、長期的な視点ではその個人消費は日本の人口とともに減っていくと考えられます。 一方、個人の金融資産はまだ増えていく可能性があります。中期経営計画でも、資産運用ビジネスは事業戦略における柱の一つとして掲げています」
――ストックポイント社との連携を発表しました。日本人はポイントが大好きな国民と言われますが、他のポイントとの連携は考えていますか。
「広く連携していきたいという気持ちでいます。私たちが構築した仕組みは、誰でも真似できるものではないと考えています」
◇クレディセゾンの発表
ポイント運用プラットフォーム「運用口座」約2週間で、利用者 1 万人突破!
(聞き手は資産運用研究所 小松めぐみ、イノベーション本部 吉田晃宗)