アマゾン・ドット・コムは26日に1~3月期(1Q)決算発表を予定している。QUICK FactSet Workstationがまとめたアナリストの調整後EPS予想(42社平均)は1.24ドルで、前年同期比16.1%減が見込まれている。
【10-12月期決算の市場予想】
・売上高 499億ドル(+36.6%) 会社予想477.5~507.5億ドル(中央値492.5億ドル)
・調整後EPS 1.24ドル (-16.1%)
()内は前年同期比
【事業別売上の市場予想】
Online Stores 273億7000万ドル (+19.9%)
Physical Stores 41億2100万ドル (前年同期の開示なし)
Third-Party Seller services 88億8900万ドル (+38.1%)
Subscription Services 28億2000万ドル (+45.4%)
AWS 52億4000万ドル (+43.1%)
(注)QUICK FactSet Workstationより、()内は前年同期比
事業別売上は現状の5部門に再編されているが、企業などにデータの保存・分析などの機能を提供するAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に対する注目度が高い。2006年にサービスを開始し順調に実績を積み上げてきたが、2013年にデータ管理の厳格さで知られる米中央情報局(CIA)のクラウドを受注したあたりから、強い追い風が吹き始めて成長が加速。2016年には売上高が122億ドル、2017年には174億ドルに拡大し、営業利益全体の7割近くを稼ぐ主力事業にまで成長した。クラウド事業はひとつのデータセンターを複数顧客で共有するため利益率が高いとされる。クラウドサービス市場でアマゾンの世界シェアは約4割でトップを誇るが、マイクロソフト「Azure Cloud」やグーグルのクラウド事業「Google Cloud」も拡大しており、熾烈なシェア争いを繰り広げている。AWSは全世界約190カ国で展開し、顧客にはグローバル企業、新興企業、公的機関などで大物を抱える。
ただ、昨年6月に高級食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」を買収したことで「アマゾンエフェクト」と称されるように、物流・小売り業界などでアマゾンを敵対視する動きが強まっていることに留意したい。10-12月期にAWSと競合するマイクロソフト「Azure Cloud」が、小売り企業の受注を獲得し成長率が加速し、その動きはしばらく続く可能性があり、AWSの伸び率が鈍化する可能性は否定できない。また、トランプ大統領がツイッターを通じてアマゾンに対し、納税方法、郵政公社の利用、他小売業者への影響など繰り返し批判を行っており、今後何らかの負担増などを強いられる可能性もあり、「トランプリスク」にも注意したい。
【アマゾンのEPSと株価の推移】
(注)グレーの折れ線は株価、棒グラフは水色がEPS予想の最高値、青色は最安値、緑と赤の●はEPS実績値をそれぞれ示す
<過去20四半期決算分析>
EPS実績 対アナリスト予想
上振れ回数 14
下振れ回数 6
EPS実績/アナリスト予想(%)
平均乖離率 +70.1
平均上振れ率 +136.3
平均下振れ率 -62.4
決算発表直後1日の値動き
上昇回数 11
下落回数 9
平均騰落率 +0.9
平均上振率 +7.6
平均下振率 -7.2
(注)QUICK FactSet Workstationの「サプライズ履歴」より 作成
アマゾンは積極投資で知られるため業績のブレが大きいのが特徴。同社の決算発表はアナリスト予想に対して上回る回数が多く、過去5年(20四半期)でEPS予想は14回上振れし、その際の平均上振れ率は136.3%にも達する。一方で、6回下振れしたが、その下振れ率は62.4%で、上振れ・下振れともに大きくなるのが特徴と言える。決算発表翌日の値動きは、11回上昇して9回下落。平均上昇率は7.6%、下落率は7.2%と振れが大きい。
市場予想から乖離した決算発表となることが多く、それを受けて株価がポジティブサプライズ、ネガティブサプライズとなり株価が大きく動くことになるようだ。今回は大幅減益が見込まれているが、市場予想を上回る着地で増益となれば、ポジティブサプライズで急騰する可能性があろう。「アマゾンエフェクト」でAWSの伸び鈍化が懸念されるが、それを克服して伸び率が強まれば、ポジティブに評価されるかもしれない。(本吉亮)
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