米国で上場する企業の四半期決算発表が本格化している。発表後に株価が極端に振れる銘柄は少なくない。決算は弱いのに急伸する銘柄がある一方、決算が強いのに売り込まれる銘柄がある。不透明感が強い中、投資家の決算の受け止め方が変わりつつあるようにみえる。
グーグルの親会社アルファベットの株価が26日の取引で急伸。終値ベースで時価総額が初めて2兆ドル(約312兆円)を上回った。第1四半期(1~3月)の決算は売上高と利益がいずれも市場の予想を上回った。インターネット広告が好調、AI(人工知能)の成長がクラウド事業を押し上げた。自社株買いと初の配当の実施も発表した。ブルームバーグ通信は、アルファベットがAI分野の主要プレーヤーになるとの見方が強まったと伝えた。
マイクロソフトの決算も強かった。クラウドとソフトウエアがいずれも伸びた。AIを中心にした設備投資をアナリストの予想以上に増やした。決算発表後の株価は上昇。フィナンシャル・タイムズ紙は、マイクロソフトとアルファベットは、決算でクラウドサービスの旺盛な需要を示し、AI開発向け巨額投資をめぐる投資家の懐疑的な見方を粉砕したと報じた。26日の取引で2社の時価総額は合わせて2500億ドル(約39兆円)以上増えたとしている。AI需要の恩恵を受けるアマゾン・ドット・コムとエヌビディアの株価も大幅上昇したと伝えた。
メタ・プラットフォームズも好決算を発表。4四半期連続の増収増益で、市場予想を上回った。AI開発強化のため、2024年通期の設備投資目標を約1割上積みすると発表したが、株価は急落。投資拡大の一方で売上高見通しが予想を下回ったことが影響。アルファベットとマイクロソフトの2社と明暗を分けた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、設備投資が利益に繋がる明確なルートを投資家が望んでいると解説した。2022年までは技術への積極投資が好感されたが、いまは株価急落のリスクがあるとしている。決算が予想を下回ったものの、投資家が望んでいた低価格電気自動車(EV)の投入加速を表明したテスラの例などを引用、投資家の「マントラ」が「Show Me the Money(金をみせろ)」に変わったと伝えた。
アナリストの算出する予想を上回るか、下回るか。上場企業の四半期決算は市場予想との比較が重要だった。いまは過去の業績より確実に将来の利益を生む投資、特にAIへの投資を積極化する企業が好まれる。投資家の期待に応える動きも歓迎される。週明け29日の取引でテスラの株価が急伸したのは、投資家が懸念した中国市場での前向きな動きに反応したもの。メタは29日も下げた。CNBCによると、S&P500種株価指数を構成する企業の46%が26日までに決算発表を終えた。アップルをはじめ有力企業の発表はまだ続く。投資家が目を光らせている。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。