米国企業はちょうど4~6月期決算発表シーズンの真っ只中。事前の市場予想では主要企業は2割前後の増益が見込まれているが、原油をはじめとした原材料費、人件費などコスト高への警戒感は経営者の間で根強い。7月以降は米中貿易戦争の影響も想定され、通期見通しを変更する企業が続出する可能性もある。恒例の米決算プレビューで注目企業の読みどころを紹介する。
マイクロソフトの第4四半期(4~6月期)決算発表は19日。QUICK FactSet Workstationがまとめたアナリストの調整後EPS予想(28社平均)は1.08ドルで、前年同期(0.98ドル)から増益となる見通しだ。三本柱となる事業の利益がそれぞれ拡大している。なかでも成長著しいクラウドサービス「アジュール」の伸びに注目が集まる。ただ今期予想には会計基準変更に伴う影響がある点に注意が必要だ。
【マイクロソフトのEPSと株価の推移】
(注)グレーの折れ線は株価。棒グラフの水色はEPS予想の最高値、青色は最安値。●はEPS実績値で緑が市場予想を上回り、赤が下回ったことを示す
【4~6月期の市場予想】
・売上高 292億ドル (+18.3%)
・調整後EPS(1株利益) 1.08ドル (+10.2%)
・事業別売上高
PBP: 市場予想96.8億ドル (+14.6%) /会社計画95.5~97.5億ドル 中央値 96.5億ドル
IC: 市場予想90.8億ドル (+22.2%) /会社計画89.5~91.5億ドル 中央値 90.5億ドル
MPC: 市場予想 104億ドル (+18.2%) /会社計画 103~ 106億ドル 中央値104.5億ドル
※QUICK FactSet Workstationをもとに作成。カッコ内は前年同期比
事業には3部門の柱がある。「オフィス」を扱うビジネス・プロセス(PBP)事業、ウィンドウズやゲーム、タブレットPC「サーフェス」などを含むモア・パーソナル・コンピューティング(MPC)事業は4~6月期でそれぞれ二桁増収が見込まれる。
利益成長への期待が高いのがもう一つの柱、インテリジェント・クラウド(IC)だ。クラウドなどの企業向けサービスは利益成長が続く。マイクロソフトの株価を5年で2倍以上の高値に押し上げた立役者だ。
4月26日公表の1~3月期の業績で、PBP事業の売上高は前年同期比17%増。オフィス365が順調に伸びた。MPC事業は13%増だった。IC事業も17%増と好調。中でもアジュールは前年同期比93%の増収となった。4~6月期の売り上げも大幅増が見込まれる。
<過去20四半期決算分析>
EPS実績 対アナリスト予想
上振れ回数 16
下振れ回数 4
EPS実績/アナリスト予想(%)
平均乖離率 +9.1
平均上振れ率 +13.5
平均下振れ率 -8.4
決算発表直後1日の値動き
上昇回数 14
下落回数 6
平均騰落率 +1.2
平均上振率 +4.1
平均下振率 -5.5
※QUICK FACTSETの「サプライズ履歴」をもとに作成
今期も高成長は続くのか。2019年6月期の第1四半期(18年の7~9月期)のEPS予想は0.91ドルと、前年同期の0.84ドルから増益が見込まれている。19年6月期通期のEPSは4.03ドル(前期の市場予想は3.83ドル)と利益成長の期待は高い。
もっとも今期見通しにはリスクがある。海外収益の大きなマイクロソフトにとってはドル高が重荷だ。新しい収益認識の基準を適用することで利益を目減りさせるとの見方もある。収益認識の新方式に従うと、長期契約やライセンス契約は外国為替相場の変動の影響が大きくなる。巨大なライセンス契約を保有するソフトウエア大手の同社には注意が必要になる。
株価は最高値圏の100ドル台を保っている。マイクロソフトがソフトウエア開発者向けサイトを運営する米ギットハブを75億ドルで買収すると6月に発表し、収益拡大を見込んだ買いが集まった。買収によりギットハブのユーザーをクラウドサービスに誘導すれば、さらに事業規模が膨らむからだ。
好業績を開示した後に、投資家が持ち高を整理するために保有株の一部を売却することはよくある。決算発表直後1日の株価をみると、過去20回のうち14回は上昇したが、6回は下落した。業績期待が先行して押し上げられた株価水準にあるなかで、利益確定売りが相次いで失速するのか、それともクラウドビジネスの収益がさらに拡大すると判断した買いが続き、右肩上がりのチャートを形成するのか。クラウドビジネスの貢献を見定める大事な決算になる。(今田 素直)
※QUICKエクイティコメントで配信したニュースを再編集した記事です。QUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。米国株については決算結果の速報ニュースのほか、FANGプラスの銘柄を中心に決算発表前に注目ポイントをまとめた「米決算プレビュー」を配信しています。投資に役立つ独自コンテンツをまとめたQUICK端末の「ナレッジ特設サイト」では、米決算プレビューに加えて決算発表の日程も公表しています。