QUICKコメントチーム=本吉亮
日経平均が年初来高値を更新するなか、逆張りETFの日経平均ダブルインバース(1357)に対する注目度が高まっている。9月末時点の純資産2129億円だったが、直近は2395億円まで増加した。ダブルインバース価格は9月末の1066円から直近まで7%下落しているにも関わらず、純資産が1割増加しており、個人投資家を中心に逆張りの意識が強いのだろう。(チャートの表示は基準価額)
ダブルインバースETFは、純資産額の2倍の日経平均先物を売り建てして運用を行う。例えば、純資産額が1000億円の場合、日経先物を想定元本で2000億円分売り建てする。先物価格が前日比で1%上昇した場合は先物の売り建て額は1980億円、ダブルインバースETFは2倍のレバレッジをかけているので2%下落して純資産額は980億円になる。ダブルインバースで2倍にするには1960億円相当の先物売りが必要となるため、20億円相当の買い戻しが必要となる。このようにダブルインバースの純資産額が増加すればするほど、相場上昇が続くとリバランスに伴う先物買いで相場上昇の追い風になるとみられる。
興味深いのはSBI証券が発表している少額投資非課税制度(NISA)の週間買付金額ランキングだ。10月14~18日において、日経平均ダブルインバースが買付代金首位となり、同種の日経平均ベア2倍(1360)も6位にランクイン。さらに、同期間の未成年者少額投資非課税制度(ジュニアNISA)の買付金額ランキングでも、日経平均ダブルインバースが首位、日経平均ベア2倍が7位にランクインした。
楽天証券の9月のデータでも、NISAの国内ETF買付代金ランキングで日経平均ダブルインバースは1位、日経平均ベア2倍が3位と、ほぼ似たような状況だ。ダブルインバースETFは日々の変動率に連動するため、「原指数が上昇・下落を繰り返す場合、原指数に劣後する」うえ、信託報酬も0.8%程度かかり長期投資に向かないだろうと思うのだが……。
各種報道によると、政府は2023年までの期限付きで導入されたNISAについて、恒久化を見送る方針を固めたという。恒久化は金融庁や証券業界が求めていたが、富裕層への優遇との批判もあり認めるのは難しいと判断したようだ。「老後資金2000万円」問題もあり、NISA恒久化は必須だと思うが、ダブルインバースのような短期売買志向を強めている現状は、長期的な資産運用、ましてや子どもの将来に向けた資産形成をサポートするという本来の趣旨からやや離れてしまっているのではないか。
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