日経QUICKニュース(NQN)=長田善行、写真=Chung Sung-Jun/Getty Images
検索エンジン「ヤフー」を手掛けるZホールディングス(ZHD、4689)がLINE(3938)と経営統合すると報じられ、関連企業の株価が軒並み上昇するなか、ZHD傘下となった衣料品通販サイトのZOZO(3092)が逆行安となった。「ヤフー・LINE連合」下での成長期待よりも、傘下企業の間での競争環境の激化による悪影響が警戒された。ZHDによるTOB(株式公開買い付け)では予定の上限を大きく上回る応募株数があったことも判明。業績の先行きに強気になれない投資家心理が表れている。
14日のZOZO株は寄り付きは高く始まったが、その後売りに押され、前日比で一時237円(9.1%)安の2348円まで下落。9月11日以来、約2カ月ぶりの安値を付けた。LINEが値幅制限の上限(ストップ高水準)まで気配値を切り上げ、ZHDも大幅高となったにもかかわらず、投資家の買いの対象とはならなかった。
株安の理由の一つは需給要因だ。ZHDは9月12日、ZOZOにTOBを実施すると発表した。TOB価格は1株2620円で、期限は9月30日から11月13日だった。「株が買い支えされていたTOB期間が終わり、機会をうかがっていた投資家が売りに動いたようだ」(国内証券トレーダー)との見方が出ている。
14日午前、ZHDはZOZOに対するTOBが成立したと発表。買い付け予定株式数(上限株数)の1億5295万2900株を上回る2億4592万3177株の応募があった。売り需要の大きさが意識されて後場に株価は一段安となった。
さらに中長期の成長期待がかつてほど高いものではなく、13日時点で35倍という予想PER(株価収益率)からみて、バリュエーション(投資尺度)面での割高感が意識されていたことも、投資家の買い意欲をそいでいる。ZOZO創業者の前沢友作氏が社長から退いたのはTOB発表の9月12日。それから2カ月あまりが経過したが、カリスマが抜けた後の成長シナリオを市場は十分に描けずにいる。
2019年4~9月期の連結決算は営業利益が前年同期比32%増の132億円。通販サイト「ゾゾタウン」の商品取扱高が増加したものの、7~9月期は4~6月期比で営業利益率は8.8ポイント低下の18.8%だった。「販促活動の強化が利益を押し下げており、市場の期待に届く内容ではなかった」(外資系証券アナリスト)という。20年3月期通期の予想に対する進捗率は41%と低調で、「業績の上振れはイメージしにくい」(ネット系証券の投資情報担当者)との声が出ている。
岡三証券の小川佳紀日本株式戦略グループ長は「LINEとZHDが経営統合したとしても、ZOZOで販売する衣料品は『ヤフー』など他の通販サイトでも購入できる。ZHD傘下でZOZOがどのような位置づけになるのか見通せない」と指摘。同統合でキャッシュレス決済での「一大経済圏」ができたとしても、衣料通販サイトの競争環境から、「企業としての存在感が低下するおそれがある」とみていた。
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