日経QUICKニュース(NQN)=田中俊行
育児用品のピジョン(7956)の株価が下げ止まらない。11日は前日比230円(5.4%)安の4000円と、この日の安値で引けた。2019年12月期の連結業績予想を下方修正した今月2日から売りが膨らみ、時価総額は約3カ月ぶりに節目の5000億円を割り込んだ。インバウンド(訪日客)需要の急減が業績を圧迫するなか、アナリストからは「売り推奨」のリポートが相次いでいる。
ピジョンの時価総額は業績修正を発表する前の2日は6167億円だったが11日の前引け時点では4920億円と、わずか7営業日で20%減った。年初来の株価騰落率は14%安で、日経平均株価(17%高)と逆行する低調な値動きとなっている。
11日に株価が大幅に下げた一因はUBS証券の10日付リポートだ。川本久恵アナリストは「日本の構造的な収益低下は株価に織り込まれていない」として投資判断を3段階で最下位の「セル」に引き下げ、目標株価も5000円から3500円に見直した。ピジョン株を巡っては、大和証券も3日付で5段階で2番目に低い「4(アンダーパフォーム)」にしており、格下げが続いている。
UBSの川本氏は構造的要因として日本の出生率低下をあげる。厚生労働省の人口動態統計(速報)によると、1~9月の出生数は前年同月比5.6%減の67万3800人で、2019年は90万人を下回る可能性が高まっている。少子化は今に始まった問題ではなく、それを乗り越えようと海外展開などを強化したピジョンの戦略はこれまで株式市場でも評価されてきた。しかし足元の少子化は想定を超えるペースで進み、「パイの縮小」としての響き方も強くなるというわけだ。
さらに想定外だったのは、香港情勢だ。ピジョンは2日開催した19年1~9月期決算に関する電話会議で「香港経由の越境電子商取引(EC)が減っているようだ」と明らかにしていた。日本の代理店が香港に卸したピジョンの哺乳瓶やローションを香港で購入する中国人観光客が多かったが、香港情勢の悪化で販売が低迷。香港が落ち着きを取り戻さない限り、インバウンド関連の売上高が回復するとは考えにくい。
ピジョンの国内ベビー用品事業の利益率は19年2~10月期に15.8%となり、前年同期比で3ポイント近く低下した。UBSの川本氏は同事業の利益率が「当面12~13%の範囲で推移する」と、一段の落ち込みを予想する。中国事業では11月に発売予定だったスキンケア商品の投入時期を来期に延ばすと発表するなど、製品開発を巡る不透明感も残る。ある国内証券のストラテジストは「インバウンド関連の販売の底は確認できず、短期的な株価回復は見込みにくい」とみていた。
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