日経QUICKニュース(NQN)=Takahiro Hosaka
経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数(加盟国プラス6非加盟国)が上向いてきた。世界の景気を半年ほど先取りするといわれる指数で、13日発表の2019年11月は99.380と3カ月前比が0.096ポイント上昇した。2カ月連続の改善となる。明るい見通しとなってきた世界経済は、消費増税後に厳しさを増す国内景気にとっても輸出を通じた下支え役になりそうだ。
出所:OECD
指数は日米独など加盟国と中国やインドなど主要非加盟国の景気先行指数を合成したもので、利用できる統計が新しく加わることや季節調整の掛け直しにより毎月、過去にさかのぼって改定する。
19年12月の発表でマイナスだった19年10月の3カ月前比は今回の改定でプラスに転じ、10月の段階で17年11月以来、1年11カ月ぶりに改善したことになった。マイナス幅が直近で最大だったのは0.348ポイント低下した18年10月で、その後19年9月まで11カ月連続でマイナス幅が縮小していた。
半導体をはじめとするIT(情報技術)分野の在庫調整の一巡や、景気対策による中国景気の下げ止まりが改善につながっている。19年10月にすでにプラス転換したということは、12月の米中による貿易交渉の「第1段階合意」以前に世界景気は底入れの兆しが出ていたのを示す。
19年11月は前月比では0.053ポイントの上昇と3カ月連続のプラスだった。ただ、前月比の変化は小さくなりがちなので、3カ月前比に注目するエコノミストが多い。
世界の景気を先読みして動く日経平均株価が昨年来安値1万9561円を付けたのは19年1月だった。そこから何度か調整をこなしつつ、OECD指数のマイナス幅縮小を後追いするように上昇してきた。伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、年明け後も堅調な日米の株価について「OECD指数も示す景気回復期待と金融緩和で、今のマーケットは稼ぎ時。本来は根深いイラン問題も、投資家はなるべく無視している」と指摘する。
今後には慎重な見方もある。農林中金総合研究所の南武志・主席研究員は「20年は米国経済が減速する見通しで、世界経済はけん引役が見当たらない。OECD先行指数がここからどんどん改善していく状況ではない」と予想する。
後退観測のくすぶる国内景気についてはどうか。伊藤忠総研の武田氏は「今が一番悪い時期だが、消費増税の影響は前回ほど大きくなく、景気は戻ってくる」とみる。一方、農中総研の南氏は「世界経済の下げ止まりで多少良くなっても、特需が一巡する東京五輪後の秋以降は不安」と身構える。世界経済の好転がどこまで続くかは、ふらつく国内景気を左右するだろう。
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