27日の米市場では米ダウ工業株30種平均が前週末比453ドル93セント(1.6%)も下落し2万8535ドル80セントとなった。下げ幅は昨年10月2日以来の大きさだった。売り材料は新型コロナウイルスの拡散であることは明白。米株のみならず欧州市場でも株式相場が軒並み下げるなどグローバルマーケットでは同時株安の様相を呈した。28日の日経平均株価も下げ幅が200円を超えている。
週明けの欧米市場では新型肺炎の影響に関する分析、見解が証券会社などから相次いで発行された。QUICKがプロ向けに提供するコメントサービス「QUICK Market Eyes」が伝えた最新の市場関係者の見方をまとめた。
「パンデミックが起こらなければ買い」=エバコア(更新日時:2020/01/28 07:58)
エバコアISIは27日付リポートで「新型コロナの感染拡大が判明するにつれて市場はリスクオフムードをより強めることになる」とした一方で、「中国の政策措置によってウイルスの感染は幾分、抑え込むことが出来る」と指摘。短期的には感染者の拡大を受けて市場がネガティブな反応を示すものの、(1)信用スプレッドがタイトニングしており、(2)金融環境が緩和的であり、(3)労働市場の需要が強い状態であることから、パンデミック(世界的な感染の大流行)が起こらなければ、下落したリスク資産を「買いたい」との意向も示している。
特に、強い労働市場と高い貯蓄率に基づく家計の金融収支の安定さは、新型コロナの流行拡大によるショックを十分に吸収できると指摘。これは米国の消費者が、米中貿易戦争中にもセンチメントを悪化させなかったことからも説得力があると指摘している。
一方、短期的にはリスクオンムードが高まりにくい環境であるとも指摘。投資家は引き続き「バリュー」よりも「成長」と「勢い」を重視するとして、「技術」、「産業」が選好されやすくなる一方、「金融」、「エネルギー」は低パフォーマンスが続く可能性があるとの見方も示されている。
新型コロナ、「日本の小売業に多面的&複合的な影響が続く可能性」=モルガン(更新日時:2020/01/28 07:30)
モルガン・スタンレーMUFG証券は27日付リポートで「2020年1月、春節スタートと同時に判明した新型コロナウイルスの感染急拡大は、中国と深い関係を築いてきた日本の小売業に多面的&複合的な影響を与える可能性が高い」との見方を示した。
2002~03年に発生、流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)と比較されがちだが、モルガンは「人口移動が大量かつ広範囲に行われる現代において、収束期間が長期化するリスクも考えられる」と指摘。この20年間、日本の小売り各社が中国大陸で積極出店を行っていた点も指摘されている。
また、「東京の街の様子」を質問するアジアの機関投資家の声が多かった様子も紹介している。
米国内の感染拡大を警戒=レイモンド・ジェームズ(更新日時:2020/01/28 08:05)
中国の湖北省武漢市を中心に感染が拡大している新型コロナウイルスに関して、米証券会社レイモンド・ジェームズは27日付のリポートで「状況は悪化している」と指摘した。中国が海外旅行の禁止措置を発表したものの、「中国当局が患者が無症状であっても伝染性があると報告している」ことに着目した。「つまり、症状のない感染した旅行者は、止められることなく政府の検査を通過することができる」ことが警戒されるという。また、「ウイルスによる死亡者は併存症のある高齢者だけではない」とし、従来は80歳以上の高齢者の死亡例がみられたが、毒性が強い恐れがあることにも着目し、米国内での感染拡大を警戒していた。
中国の海外旅行禁止措置、「世界・日本経済への影響は限定的」=SMBC日興(更新日時:2020/01/28 10:48 )
中国政府は27日、新型コロナウィルスの感染拡大の封じ込めのため、中国人による海外への団体旅行を禁止した。
SMBC日興証券は27日付リポートで、「中国の海外旅行禁止措置による世界・日本経済への影響は限定的」との見方を示した。同証券の試算によれば、海外旅行禁止措置が仮に6カ月続いた場合、中国人の海外団体旅行支出は831憶ドル程度減少し、世界の国内総生産(GDP)を約0.1%程度下押しするという。また日本での旅行支出は2950億円程度減少するとみられ、日本のGDPで約0.05%の下押しに止まる。
ただし、「現在の大都市の閉鎖や、国内旅行の禁止が長期化したり、広がったりすると、中国経済自体が減速していく。インバウンド関連企業だけではなく、中国進出企業にも影響が及んでくる」として、今後の新型コロナウイルスの感染状況を注視していく必要があると指摘した。