QUICK Market Eyes=根岸てるみ
■コロナ懸念の影に隠れる景気変調リスク…
新型コロナウイルスに世界の株式相場は警戒感を強めている。ただ、この問題で見えにくくなっている景気の変調をうかがわせるシグナルにも注視したい。ウイルスや忍び寄る景気減速といったリスクに向き合うには実物資産の金が有効かもしれない。
週明け27日の日米株式相場は大幅安だった。新型肺炎の感染拡大が嫌気された格好だが、下落の理由はこれだけとはいえない。世界鉄鋼協会が28日に発表した2019年の世界粗鋼生産量は、前年比3%増と3年連続で過去最高だった。しかし個別でみると、日本は自動車向けなどの需要が低迷し、10年ぶりの水準に落ち込み、米国は伸び率が縮小した。
■「Dr.カッパー」の診断いかに
素材でいえば、銅先物相場が下げ止まらない。ロンドン金属取引所(LME)で3カ月先物は27日までに9日続落。この日は前日比183ドル安の1トン5743ドルと約3カ月ぶりの安値水準に下落した。銅は市場で「ドクター・カッパー(Copper=銅)」とも呼ばれ、景気の先行きを占ううえで市場参加者の多くが注目する。
豪英資源大手BHPグループ(@BHP/AUI)は21日に発表した決算で20年6月期通期の銅の生産量を据え置いたものの、頼みの綱の中国は景気刺激策の打つ手がもうないとの指摘もある。クレディ・スイスは最近のレポートで中国のPMIと銅価格(プレミアム)は相関性が高いとしたうえで、「2つの指標を分析すると明らかに中国の需要の弱さを示している。米中協議は第1弾の合意に達したが、この効果は非常に小さい」との見方を示した。
■フィンテック・ユニコーン出資が特徴の米銀にもシグナル
そしてもう一つ気になるのが米国のIPO(新規株式公開)。米シリコンバレーに拠点を置き、IT関連の引き受けに強みを持つSVBファイナンシャル・グループ(@SIVB/U)の19年10~12月期決算では、IPO関連のワラントの取引が減少した。ウェドブッシュは24日付リポートで「ベンチャーキャピタル市場は引き続き活況を呈しており、企業の資金調達のニーズもある。しかし景気サイクルの後期にあり、資金調達サイクルが改善する余地はほとんどない」と指摘した。
■プロがお好みの金融商品とは
大きなトレンドでみればカネ余りが株式相場を支える構図はまだ続くだろうが、米大統領選、中東リスク、新型肺炎の問題とリスクは多い。こういう時は安全資産の金という選択肢もありそうだ。QUICKエクイティコメントとデリバティブズコメントのWebサービス「Quick Market Eyes (QME)」がマーケット関係者に2020年に最も強気な金融資産を挙げてもらったところ、米国株や日本株について金を挙げた人が全体の9%(回答者数は34人)いた。
金属関連の大手といえばDOWAホールディングス(5714)や三井金属鉱業(5706)、三菱マテリアル(5711)など。また、金属リサイクルのアサヒホールディングス(5857)の株価は昨年10月の業績上方修正以降、右肩上がりとなっている。足元の金先物相場の上昇も業績拡大期待につながっている。
<ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場と銅先物相場>
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