新型コロナウイルスの猛威が止まらない。日本時間3日朝の時点では一部には中国での死者が360人に達したとの集計もあるようだ。前週末の米株式市場ではダウ工業株30主平均の下落幅が600ドルを超えるなど金融市場としては経済への悪影響もいよいよ無視はできなくなってきた。QUICKがプロ向けに提供するコメントサービス「QUICK Market Eyes」が3日早朝までにまとめた関連情報は以下となっている。
■中国GDP予想、20年1Qには年率換算4%増まで鈍化も=ゴールドマン(更新日時:2020/02/03 07:25)
ゴールドマン・サックスは2日付リポートで、2020年の中国GDP成長を従来予想から40bp引き下げた年5.5%増と予想した。感染が拡大する新型コロナウイルスによる経済への影響を考慮したもの。また、20年1~3月(1Q)のGDP成長も年率換算4.0%増と従来予想の5.9%増から大幅に下方修正した。
リスクシナリオ下における20年通期のGDP成長率予想は、中国政府による政策面でのテコ入れがあったとしても、5.0%増まで成長が鈍化する可能性があるとも見込まれた。中国の19年通期のGDP成長は6.1%増だった。
一方で、緩和的な政策に支えられることで中国の経済成長が年内に回復すると見込んでいることから、中国株を戦略的な「オーバーウエート」で据え置いている。

※中国のGDP鈍化に拍車がかかるリスクが意識される(QUICK FactSet Workstationより)
■PBOCの資金供給、「少ないように思える」=ジェフリーズ(更新日時:2020/02/03 07:49)
感染が拡大する新型コロナウイルスによる経済への影響が懸念されている。国際通貨基金のゲオルギエバ専務理事は2日、「世界景気に短期的な減速をもたらす可能性がある」との懸念を表明した。
2日、中国人民銀行(中央銀行、PBOC)は3日に公開市場操作(オペ)で金融市場に1兆2千億元(約18~19兆円)を供給すると発表した。
ジェフリーズは3日付リポートで、「投資家は今後数週間のうちに新型コロナウイルスの感染の拡大が食い止められることを期待しているが、コロナウイルスに感染した人の大半が依然として全快していないという事実が状況を複雑にしている。武漢市のある湖北省は中国第7の経済都市で、主要な物流及び供給拠点である。良いニュースは、生産能力がそのまま残っていること。悪いニュースは、武漢のサプライチェーンが滞ることで、中国経済への悪影響が不可避的となること」との見方を示している。
また、「新型コロナウイルスの感染率が強いことから、ウイルスがその効力を失う前にはるかに高いペースで感染者が増加する可能性が高い」との見方も示されている。
市場で見られたポジティブな点として、香港ドルの香港銀行間取引金利(HIBOR)が「懸念していたほど急上昇しなかった」ことが挙げられている。一方で、PBOCによる短期金融市場への資金供給は「金額規模として少ないように思える」と指摘している。
■「20日にLPRの引き下げを予想、金融支援のシグナルとなる可能性」=UBS(更新日時:2020/02/03 08:03)
2日、中国人民銀行(中央銀行、PBOC)は3日に公開市場操作(オペ)で金融市場に1兆2千億元(約18~19兆円)を供給すると発表した。
UBSは3日付リポートで、3日の資金供給を受けてPBOCは「20日に優良企業向け融資の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)を引き下げる」と予想し、経済に対する金融支援のシグナルとなる可能性が高いとの見方を示した。また、引き下げ幅については「これまでの5bpよりも大きくなる可能性がある」と予想している。
一方で、「LPRの引き下げにより、景気の減速程度によっては銀行の収益性がさらに悪化する可能性がある」とも指摘している。
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