QUICK Market Eyes=片平正二、大野弘貴
サウジアラビアやロシアといった産油国が原油供給の主導権をかけて争う姿勢を鮮明にしている。加えて新型コロナウイルスの感染拡大が世界景気に下押し圧力として働く。おのずと原油先物相場にも影響が波及し、価格も不安定化している。市場ではマネーフローにも目立った動きが見られ始めた。
■WTI原油に連動する上場投資商品(USO)に4年ぶりの大規模資金流入
10日の米国市場でWTI原油に連動する上場投資商品(ETP)のユナイテッドステーツ・オイル・ファンド(コード:USO)に大規模な資金が流入した。QUICK FactSet Workstationによれば2億1720万ドルの資金流入となり、2016年2月11日(2億2626万ドル)以来、4年1カ月ぶりの大きさを記録した。
この日の米国市場でUSOは11.04%高で6営業日ぶりに急反発した。石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産体制が崩れたことで前日まで大幅に5日続落していたが、米株が上昇する中でリスクオフの動きがやや一服した。6ドル台と2006年の設定来安値まで下げたことで、資金流入を伴いながら押し目買いの動きが強まったとみられる。
■CMEのエネルギー先物・オプション出来高、9日に過去最高の680万枚
GLOBEXを運営するCMEグループが10日、9日のエネルギー先物・オプションの出来高が680万枚となり、2019年9月16日(620万枚)を上回って過去最高の出来高を更新したと発表した。WTI原油先物・オプションも480万枚となり、これまでの過去最高(2019年9月16日、430万枚)を上回ったという。
9日のWTI原油先物は10.15%安の1バレル=31.13ドルで大幅に4日続落していた。石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調減産体制が崩れたほか、世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受けてリスクオフの動きが強まる展開だった。
CMEグループのエネルギー部門トップのPeter Keavey氏は声明で「世界的に経済が不安定な中、世界中の市場参加者は引き続きリスク管理の上でCMEグループのエネルギー先物とオプションに注目している。特に米国市場の時間外取引で多くの売買があり、米エネルギー製品がベンチマークとして流動性・柔軟性が高いことを示している」との見解を示していた。
■原油価格下落時の推奨銘柄は…
ジェフリーズは10日付リポートで原油・石炭価格低下の恩恵を受ける銘柄を取り上げている。産業ガスメーカーは、費用の大半をエネルギー価格で構成されていることから、恩恵が大きいと指摘。また、セメントメーカーの利益は石炭価格の下落局面で増加する傾向にあるとも指摘している。
これらの恩恵を最も受けることが出来るとして大陽日酸(4091)、宇部興産(4208)、トクヤマ(4043)は「化学セクターのアウトパフォーマーとなるだろう」との見方が示された。一方、塗料会社については、為替感応度が高いことから、原油価格の下落を楽観視できないとの見方も示されている。