QUICK Market Eyes=大野弘貴
17日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅反発した。トランプ米大統領が経済活動の再開について具体的な方針を示したことを好感した買いが入った。やっと一つ筋の光明が見えたと言えるが、活動再開後に企業はどの程度動けるのだろうか。少なくとも景況感の冷え込みは過去の危機レベルにまで達している。
■日米ともに景況感が大幅悪化
企業の景況感が急速に悪化している。15日にニューヨーク連銀が発表した4月の製造業景況指数はマイナス78.2で過去最低に、16日にフィラデルフィア連銀が発表した同指数はマイナス56.6と2カ月連続で大幅悪化した。
日本の製造業も例外ではない。QUICKが実施した4月のQUICK短観で、製造業の景況判断指数(DI)はマイナス26と、前月調査のマイナス5から21ポイント悪化した。前月からの悪化幅としては東日本大震災直後の2011年4月にマイナス28ポイント悪化して以来の大きさとなった。非製造業DIはマイナス12と前月比で23ポイント悪化した。非製造業DIは11年4月の前月比22ポイントの悪化を上回り、前月比の悪化幅としては06年12月以降で最大となった。
■景況感悪化でも「自社の株価が安い」と回答
日本企業の20年3月期決算についても今月下旬以降本格化するが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けて落ち込んだ景況感も背景に、今期予想については相当慎重な見通しを示す企業も相次ぎそうだ。
ただ、悪化する景況感とは裏腹に株高を期待したくなるようなデータもある。
QUICK短観では自社の株価水準について調査しているが4月の調査では「自社の株価が高い」と回答した企業3社に対し、「自社の株価が安い」と回答した企業は74社に上った。
「安い」から「高い」を減じて算出するDIは71と、前月比変わらずとなった。
■自社株買い発表は通常より高く評価された
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは16日付リポートで「9~15日の期間に自社株買いを発表したTOPIX採用企業は11社、総額約110億円」と算定。「自社株買い発表企業の期間中の対TOPIX相対騰落率の中央値は5.6%で11社中9社がプラスとなり、TOPIXをアウトパフォームする傾向がみられた。COVID-19感染拡大の影響を受けて企業の収益環境が全体的に厳しく、先行き不透明感が高い中、自社株買い発表は投資家に通常よりも高く評価され、アルファの源泉となる蓋然性が高い」との見方を示した。
悪化する景況感や経済指標を受けて株価指数の上値が重くなる中、企業自身が発した割安とのシグナルを素直に好感する展開は、しばらく続く可能性がありそうだ。
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