外国人投資家の日本株売り姿勢が継続している。東証の投資部門別売買状況では、外国人投資家は4月第3週までに現先合計で10週連続の売り越しとなった。売り越し額は2月下旬をピークに減少傾向にあるが、4263億円と過去と比較すればなお高水準だ。新型コロナウイルス問題に収束が見通せない中、外国人投資家の持ち株比率の低い企業のパフォーマンスが際立っている。なかでも上昇率の上位には話題のテーマに関連する銘柄が並んだ。
■外国人投資家の行動は?
TOPIXをユニバースとし、外国人投資家の持ち株比率が高いポートフォリオと低いポートフォリオのパフォーマンスを比較した。期間は新型コロナウイルスが深刻化して株式相場が乱高下する前の2月末から、4月23日まで。結果は持ち株比率の低いポートフォリオの上昇率が大きくなり、TOPIXも上回った。
チャートを見ると、3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的流行)を表明した直後から、外国人の持ち株比率が低いポートフォリオのパフォーマンスが上向き始めた。一方、比率が高い銘柄は軟調となり、外国人投資家が売り急いだ様子が伺える。
■話題のテーマ株
さらに比率が低い中で上昇率が大きい銘柄をみると、足元で話題となっているテーマが浮かび上がる。対TOPIXで最も優れたパフォーマンスを示したのが、流通食品小売業および官公庁などの顧客向けにクラウドサービスを提供するサイバーリン(3683)で需要拡大を背景に、継続した利益成長が見込まれている。次いで目立ったソリトン(3040)はGIGAスクール構想やテレワークの浸透によってITセキュリティ事業での追い風が期待される。構内通信ネットワーク整備において、既にいくつかの教育委員会で導入実績もあり、この前例を生かして導入をすすめるとの見方がある。学校法人向けにクラウドシステム型の教育支援システム「マナバ」の販売を行う朝日ネット(3834)も教育ICT(情報通信技術)関連銘柄だ。包装資材商社のシモジマ(7482)は原油価格の下落によりエチレンなどレジ袋の原料安で採算の改善が見込まれる。首都圏近郊でスーパーマーケットを展開するOlimpicG(8289)は新型コロナウイルスの感染が広がりを見せる地域で売れ行きの伸びが期待されている。
そのほか上昇率が大きくなった銘柄には、小売業や食品といったディフェンシブ銘柄の一角や相対的に時価総額が小さいといった特徴がみられた。
国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、新型コロナウイルスの感染が広がる影響で2020年の世界経済成長率はマイナス3.0%と、1929年の世界恐慌以来で最低になるとされている。大和証券によれば、「株式市場はまだ十分に景気減速を織り込めておらず、外国人投資家の日本株売りは今後も続く可能性がある」と指摘する。
<関連記事>
■原油の上場投資商品に資金流入、運用対象はWTI 6~7月限で関心集める
■異例づくしの3月REIT売買、個人の買越額・銀行の売越額は「過去最大」 売り圧力への警戒は続く