NQNニューヨーク=岩本貴子
米アマゾン・ドット・コムが4月30日に発表した2020年1~3月期決算は、売上高が前年同期比26%増の754億5200万ドル(8兆円強)だった。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための外出制限でネット通販が活況だった。4~6月期も売り上げの伸びは続く見通しだが、配送などにあたる人員コストも急増しており投資家の懸念材料となっている。
■ネット通販事業の売り上げは24%増
1~3月期のネット通販事業の売り上げは24%伸びた。新型コロナを封じ込めるため、各国・地域の都市で経済活動や外出の制限が広がり「消費者がヘルスケア用品や日用品をネット通販で買う傾向を強めている」(JMPセキュリティーズ)のが主因だ。
JMPの分析によると、アマゾンのサイトでは3月に使い捨て手袋やパン焼き器、保存できる食料品の購入が急増したという。自宅での巣ごもり需要は続き、アマゾンは4~6月期の売上高が750億~810億ドルになる、とそろばんをはじく。QUICK・ファクトセットの市場予想は779億3900万ドル程度だ。
■コロナ対策に40億ドル
ただ、こうした需要をさばくためのコストも膨らんでいる。1~3月期の配送関連のコストは前年同期比49%増となり、ネット通販の売り上げの伸び(24%増)を大きく上回った。
アマゾンは需要増に対応するため、新たに従業員を採用し、賃金も引き上げている。ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は4月に公開した株主への手紙で、賃上げが4月だけで5億ドル以上のコスト増になると述べている。
内部の課題も無視できない。倉庫や配達の仕事を担う従業員の間では健康不安からストライキが広がっている。アマゾンは世界の全従業員を対象に新型コロナの定期検査の導入を検討しているという。4~6月期にコロナ対策として40億ドルを投じる見通しで、営業損益は15億ドルの赤字~15億ドルの黒字(前年同期は30億8400万ドルの黒字)を計画している。
今回の新型コロナの問題が「消費者や企業のネット通販やクラウドサービスの利用を加速させた」(ゴールドマン・サックス)ことは間違いない。JPモルガンの担当アナリストは「食料品や日用品をネットで買う動きの多くは、新型コロナの問題が収束した後も続くだろう」とみる。
アマゾンはこれまでもコンテンツや配送網への先行投資を新たな売り上げの伸びにつなげてきた。株価は4月中旬に上場来高値まで上昇している。さらなる上値を目指すにはコロナ対策費さえ将来の成長につなげる強さを市場に証明する必要がある。
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