NQNニューヨーク=張間正義
「コロナ禍」さえも追い風になり、成長が一段と加速した。画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアが21日に発表した2020年2~4月期決算は2四半期連続で増収増益だった。人工知能(AI)の普及に伴いデータセンター部門の売上高は過去最高を更新。「巣ごもり消費」によるゲーム需要の拡大の恩恵も受けた。
■データセンター部門の売上はゲーム部門に迫る
成長をけん引するデータセンター部門の売上高は初めて10億ドルを上回った。アマゾン・ドット・コムやマイクロソフトなど「ハイパースケーラー」と呼ばれる大手クラウド事業者向けの売り上げが好調だった。新型コロナで在宅勤務が広がり、クラウドサービスの利用が増えたことも後押しした。同部門の売上高は最大のゲーム部門に肉薄する。
<決算の主な項目>
20年2~4月期 | 市場予想 | |
売上高 | 30億8000万ドル(39%増) | 29億7500万ドル |
純利益 | 9億1700万ドル(2.3倍) | 8億4800万ドル |
1株利益 | 1.47ドル | 1.39ドル |
(注)カッコ内は前年同期比。
<部門別売上高>
20年2~4月期 | 市場予想 | |
ゲーム | 13億3900万ドル( 27%) | 13億ドル |
データセンター | 11億4100万ドル( 80%) | 10億5000万ドル |
映像化 | 3億 700万ドル( 15%) | 3億500万ドル |
自動車 | 1億5500万ドル(▲7%) | 1億6100万ドル |
OEMその他 | 1億3800万ドル( 39%) | 1億2800万ドル |
(注)カッコ内は前年同期比増減率。▲は減。市場予想は20日時点でQUICK・ファクトセットまとめ。
■「データセンターとAIの両事業でより高い競争力を確保できる」
5~7月期からは4月に買収を完了したイスラエルの半導体設計会社メラノックステクノロジーズの収益が含まれる。5~7月期の売上高見通しの13%を占め、金額にすると4億7450万ドル。メラノックスの19年4~6月期の売上高(3億1030万ドル)から大幅に増える。増収分は「高付加価値分野での相乗効果だ」とニーダム・アンド・カンパニーのラビンドラ・ギル氏は太鼓判を押す。
エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)も「(メラノックス買収で)データセンターとAIの両事業でより高い競争力を確保できる」と胸を張る。
■開発動向は顧客の設備投資すら左右
データセンター向けの供給不足が続いていたところに、新型コロナのまん延を受けて「ゲノム解析など医療研究でもAI向けの成長余地が拡大する」(ニーダムのギル氏)との期待も浮上した。14日にはAIを搭載したデータセンター向けGPUの新製品「A100」を発表。「高性能の新製品投入は顧客を一段の設備投資に駆り立てる」(ゴールドマン・サックスのトシヤ・ハリ氏)と、エヌビディアの開発動向は顧客の設備投資すらも左右する。
主力のゲーム部門は高い増収率を記録した。人々が自宅でゲームを楽しむ時間が増え、ゲーム向けGPUの需要増につながった。売上高の3割とされる中国向けが新型コロナの影響で落ち込むとの見方もあったが、無用の心配だったようだ。「任天堂のゲーム機『ニンテンドースイッチ』向けに強い需要があった」とコレット・クレス最高財務責任者(CFO)は説明する。
■業績見通しは明るい
5~7月期の売上高は前年同期比39~44%増を見込む。メラノックスの買収効果と「A100」による収益増が寄与する。
<業績見通し>
20年5~7月期 | 市場予想 | |
売上高 | 35億7700万~37億2300万ドル | 32億4700万ドル |
粗利益率 | 65.5~66.5% | 64.80% |
決算発表を受け、21日の時間外取引でエヌビディアは通常取引の終値を1%弱下回る348ドル台で推移している。好決算を織り込む形で上昇してきたため、発表を受けて利益確定売りが出た。ただ、3月に付けた年初来安値から株価は2倍に上昇。株価を今後1年の1株利益で割ったPER(株価収益率)は44倍台と過去最高水準にあり、株価指標面では過熱感が出ている。株価は年内のデータセンター向け需要の大半を織り込んだとの見方もある。
一方、BMOキャピタルのアンブリッシュ・スリヴァスタヴァ氏は「今後、多くのデータセンターでエヌビディアの半導体が、ライバルのインテルやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の製品に取って代わる」と予想、目標株価は425ドルに設定する。「押したら買い」の姿勢で臨む投資家が多いエヌビディア。長期的な成長力を考慮すると足元の過熱感はそれほど気にならないようだ。
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