QUICK Market Eyes=根岸てるみ
新興株市場が活況だ。東証マザーズ指数は21日、2019年5月8日以来1年ぶりの高値を回復した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い新規株式公開(IPO)を取りやめる企業が相次いでいたが、約2カ月ぶりに「再開」の見込みが出てきた。個人投資家資金が流入し、新興株市場が勢いづく可能性もありそうだ。
■フィーチャ、ロコガイド、コマースOneホールディングス
東京証券取引所は前週、3社のマザーズ市場への上場を承認した。
6月24日に上場予定のフィーチャ(4052*J)は、画像認識ソフトウエアを開発・販売している。主に車載カメラおよびドライブレコーダー向けに歩行者や、車両などを検知するシステムのソフトウエア開発に力を入れている。自動車部品メーカーなどに販売している。主幹事はSMBC日興証券。久々のIPO銘柄ということや、成長性が期待される分野で事業を手掛けていること、2020年6月期の連結最終損益が黒字転換する見通しなどが投資家に評価されそうだ。公募が15万株、売り出しが43万株と少なめで需給的にも人気化しやすい側面がある。
同じく来月24日に新規上場予定のロコガイド(4497*J)は、地域の買い物客と小売店をつなぐ情報マッチングサイト「トクバイ」を運営している。新聞購読率の低下を受けて、折込チラシに替わる情報サービスとして需要が伸びている。売上高は右肩上がりで、19年3月期に税引き利益は黒字転換した。主幹事はみずほ証券。公募株数が234万6700株とやや多い。
6月26日にマザーズへの上場が決まったコマースOneホールディングス(4496*J)は、中小企業向けにeコマースサイトの構築・運用サービスをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)モデルで提供している。主幹事は大和証券。公募が15万株、売り出しが38万4000株と少なめのため、需給的に初値が上昇する可能性もありそうだ。
■オンライン診療市場の競争激化か
21日の東証マザーズ指数の終値は927と、約1年ぶり高値水準を付けた。25日の前場の取引では再び騰勢を強め上値を一段と切り上げている。新興株市場には新しい分野で事業展開する企業が多く、テレワーク関連のサイバーセキュリティクラウド(4493、マザーズ)や新型コロナ向けワクチン開発を手掛けるアンジェス(4563、マザーズ)などに投資家資金が流入した(関連記事:テレワークトレーダーも援護射撃? 上値追いのマザーズ指数は売買動向にも着目)。過去1年間に上場した銘柄の値動きを示す「QUICK IPOインデックス(加重平均)」も21日に年初来高値を更新している。
指数構成銘柄のうち、年初からの上昇率が最も大きかったのは、オンライン診療アプリを手掛けるメドレー(4480、マザーズ)で約2.5倍上昇した。政府が時限措置として初診でのオンライン診療を特例で認めるなど、今後の市場拡大の期待から買いが膨らんだ。ただ、LINE(3938)が今夏にもオンライン診療市場に参入すると伝わり、競争激化が懸念されている。
2カ月ぶりのIPOで新興株市場がさらに活況になるかもしれない。
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