3日の東証REIT指数は続伸して終えた。ここにきてコロナショック後の戻り高値を上回るなど上昇ピッチが加速している。ニューノーマル(新常態)では不動産の価値が変わる可能性があるものの、市場では前向きな見方が広がりつつある。
※東証REIT指数の推移■「今のオフィス系REITには商業系やホテル系REIT以上の魅力がある」
野村証券は2日付リポートで「世界的に経済活動再開への期待が高まる中、各国の金融緩和を背景とする資金余剰的な環境もあり、最近の株式市場はリスクオンの様相を呈している。日本の上場不動産投資信託(J-REIT)相場も例外ではない」と指摘。「J-REIT市場では最近、商業系REITやホテル系REITの株価が上昇する場面が時々見られる。典型的なリスクオン相場の中、経済活動再開による恩恵への期待と、低位にある株価バリュエーションから注目する向きがある」との見方が示された。
その一方で、「商業施設やホテルのテナントの中には、緊急事態宣言解除を受けたこれからの客足の回復や、人々の新生活様式下での持続可能な利益水準をある程度の期間確認してから、法的整理手続きや事業撤退の判断、賃料減額要請を改めて行うところが増える可能性もある」と指摘。
商業施設やホテルにとって最も厳しい時期はいったん過ぎたのかもしれないが、「テナントが何らかの動きを起こす時期が終わったことを意味しないことには注意したい」との見方も示されている。
また、「企業がオフィスの返室や移転を決めるとしても、実際に行動に移すのは2021年以降になる」とも指摘。ファンダメンタルズとバリュエーションのバランスから、「今のオフィス系REITには商業系やホテル系REIT以上の魅力がある」との見方も示した。
野村証券は東証REIT指数のターゲットを1750としている。
■「Go To Travel」キャンペーンなどで旅行需要が回復、ホテル系REITを格上げ
訪日客激減、オリンピック延期、国内居住者外出自粛、ホテルオペレーター倒産、といった順番で、新型肺炎は業界環境をこの4カ月間で急速に悪化させた。緊急事態宣言解除後も6月18日までは地域移動自粛が続いている。
UBS証券は1日付リポートで、足元ではホテルオペレーターの倒産リスクを抱えながらも、「『GO To Travel』キャンペーンなどの効果で国内旅行需要が徐々に回復を始めるだろう」と指摘。2021年には、新型肺炎の再流行がなければ、僅かに国内出張需要とインバウンド需要も回復を始め、22年も回復が続くとみている。新型肺炎の影響で今後の供給計画に関してホテル関連事業者は慎重になることや、業界再編なども見込め、一部で既存ホテルでは閉鎖もあり得るため、「競争環境は改善するだろう」との見解を示した。
ホテル銘柄に関しては、JHR(8985)およびINV(8963)を「ニュートラル」から「バイ」に引き上げた。(QUICK Market Eyes 大野弘貴、川口究)