5月に経営破綻した米レンタカー大手ハーツに米国の個人マネーが群がり、世界で話題を集めている。なぜ個人は一見、非合理的とも思える行動に走るのか。答えは「もうかる」からだ。この単純な事実が新型コロナをめぐる給付金を株式市場へと流し込み、買うから上がる、上がるから買うというバブルを演出している。
■「ロビンフッダー」3つの特徴
株式取引用のスマホアプリ、米ロビンフッド経由の株式保有者を「ロビンフッダー」と呼ぶ。6月15日までの1カ月間でロビンフッダーの数が増えた上位50銘柄を分析した。利用したのはロビンフッダーを追跡するインターネットサイト「ロビントラック」のデータだ。ここから浮かぶスマホトレーダーの特徴は3つある。
1つめは低位株を好む傾向が強いという点だ。5月15日時点で株価が5ドル未満だったのは24銘柄と半数近くを占めた。最高はアマゾン・ドット・コムの2409ドル、最低はギリシャの海運会社シーネジー・マリタイム・ホールディングスの0.138ドル、中心値は4.9ドルだった。
2つめは勝率の高さだ。経営破綻した南米の航空会社と6月に入って新規上場した企業を除く48社のうち46社の株価が期間中に上昇した。上昇を勝ちとして勝率をはじくと9割5分を超える。
とりわけ低位株のパフォーマンスが良好だった。全体の平均騰落率は79%の上昇だが、5ドル未満の24銘柄は112%上昇した。そのうち1ドル未満の12銘柄に限ると、上昇率は126%に達した。最大の上昇率は6.4倍(0.81ドル→5.15ドル)となったカービデオ製造のデジタル・アライ(カンザス州)だ。
株価1ドルの10銘柄に同じ金額を投資し、1銘柄でも10倍を超える大化け銘柄があれば、残り9銘柄は無価値になっても元本が回収できる――。ロビンフッダーの投資行動からは、こうした「正論」がうかがえる。
3つめは投資対象がグローバルだという点。東京株式市場では、このところソニーが商いを伴って上昇しているが、そこにはロビンフッダーの姿もみえる。ロビンフッド経由のソニーの米預託証券(ADR)の保有者数は過去1カ月で30%も増えた。ロビンフッダーはソニーを大化けする可能性がある銘柄の一つとみているのだろうか。
■中国でも
中国の不動産サイト、房多多(ファンドゥオドゥオ)や個人向け金融の上海嘉銀金融科技(ジャイングループ)といったADRの保有者数も急増している。
問題は逆説的だが、こうした個人の成功体験が景気の波を必要以上に大きくしかねない点にある。一度、あぶく銭を手にすると環境が一変しても手を引けず泥沼にはまりこむギャンブルの魔力だ。米国の給付金が中国企業に流れ込んでいる可能性が高い。それを米議会が問題視するのも時間の問題ではないか。〔日経QUICKニュース(NQN)永井洋一〕