休業要請や人の移動制限の解除も進み、少しずつではあるものの経済活動もそろりと回復に向かい、人の動きにも広がりが出てきた。まだ従来通りとはいかないものの、売り上げの落ち込みが目立った企業も底入れ感は広がりつつある。
■優待投資は好機?
サービス業を中心にまだまだ株価の戻りは鈍く、6月優待銘柄をチェックすると優待利回りだけで3%を超える銘柄が114銘柄のうち30銘柄ある(図1)。
企業収益でも2020年度中は回復を見込む企業が少ない中で、中長期の保有を前提に考えれば株価が低迷する今こそ、投資の好機になる可能性がある。株価が低迷している銘柄には人気の外食チェーンも多く、投資妙味も増している。例えばすかいらーくホールディングス(3197)も優待利回りは3%を超えている。
19年12月末の権利付き最終売買日の利回りは2.7%だったが、株価の低迷で利回りは上昇した格好だ。優待カードは宅配では使えないもののテイクアウトには対応しているもようで、店舗内での飲食にまだ抵抗がある人でも使用機会は確保できる。もっとも、業況は厳しく、5月の既存店売上高は前年同月比47.8%減と落ち込んでいる(図2)。
宅配やテイクアウトは急拡大しているが、客単価の上昇が客数減を補うには至っていない。緊急事態宣言の解除が進んだ6月の戻りがカギを握りそうだが、先週子供連れで筆者が「ガスト」を久しぶりに利用した際、休日夜7時過ぎの時間帯で客席の埋まり具合は半分にも達していなかった。近隣の回転ずしが同じ時間帯で1時間弱の待ち時間だったことに比べると、個人的には店舗への客足の戻りは鈍い印象だった。余談だが注文はタッチパネル方式に変わり、省人化の流れが結果として店員との接触機会を減らす効果につながっていた。
■10万円未満の6月優待銘柄
業況に不安が残る中では優待権利が得られ、投資単位の低い銘柄から投資を考えるのも1つの手だろう。6月に優待権利が確定する銘柄のうち、10万円未満で優待権利が得られる銘柄は32社ある(図3)。
最低購入価格がもっとも低い金融情報サービスのフィスコ(3807、ジャスダック)は1万3800円から購入が可能。優待ではIPO(新規株式公開)に関する情報が得られる無料クーポンが保有株数に応じた期間分でもらえる。不動産開発のADワークスグループ(2982)は100株以上では株主クラブ会員向けの情報発信にとどまるが、1000株以上持てば商品交換が可能な優待ポイント制度の対象になる。保有株数に応じて内容に差をつけている企業も増えているため、購入時には優待内容を細かくチェックしたい。
■コロナで優待見直し
新型コロナウイルスをきっかけに優待内容を見直す動きもまた出ている。居酒屋チェーンなどを展開する三光マーケティングフーズ(2762、2部)は店舗で使える割引券を配布していたが、20年12月末から通販サイトで使える優待ポイントに切り替える。20年6月末時点の株主は従来通りの優待内容となるが、新型コロナ後の「新常態」に対応し、家で楽しむことができるスタイルに適合できるように変更した。施設や店舗の休業が生じた企業を中心に優待の有効期間延長の動きは出ているものの、利便性を考えれば優待券が使える場所についても今後は精査が必要になりそうだ。例えば手芸用品店の藤久(9966)は、優待の買い物券は店舗のみ使用が可能で通販やインターネット販売には利用できない。
引き続き新型コロナをきっかけに優待を見直す動きが相次ぐ可能性には注意が必要だ。6月以降に優待の廃止を発表した企業は19日まででキャリア(6198、マザーズ)、レオパレス21(8848)、RVH(6786、2部)で、新型コロナによる経営環境の悪化や従前からの業況悪化が響いている。優待は企業にとってコストであることに変わりはない。業況悪化が長引くようであれば、廃止には至らずとも縮小に踏み切ることもあり得る。また6月優待銘柄ではホテル運営のレッド・プラネット・ジャパン(3350、ジャスダック)は新型コロナの影響を考慮し、すでに発行した優待カードの有効期限を延長する一方で20年6月末時点の株主を対象にした優待は実施を見送る。
一方、浜木綿(7682、ジャスダック)、ウエスコホールディングス(6091、2部)、松本油脂製薬(4365、ジャスダック)が6月に入って新設や導入を発表している。個人を中心に投資意欲が高まっている中で、新興企業を中心に優待導入で株主を呼び込みたいとの思惑が高まっている様子も感じられる。優待を巡り今後動きが活発化しそうだ。(QUICK Market Eyes 弓ちあき)
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