証券アナリスト=三浦毅司(日本知財総合研究所)
新型コロナウイルスの感染拡大の影響が最も深刻なのは、個人消費に依存する小売りとサービス業だ。政府は5月25日に緊急事態宣言を全国で解除し、東京都などは6月19日に店舗などへの休業要請を全面解除したが、客足の戻りはなお鈍いとみられ、売上高がコロナ前の水準に回復するには時間がかかりそうだ。
業績に反映されていない企業の期待値
経営環境が厳しい時に業績を支えるのが企業が持つ知的財産の価値だ。日本知財総合研究所では、株式の時価総額や企業の純資産額などから広義の知財価値を独自に算出してランキングを作成した。
企業価値を示す時価総額から現在の資産額と、今後、稼ぎ出す利益を差し引いて、知財の価値とした。将来の利益はROE(自己資本利益率)を個別に計算し、上場企業の平均値と比較して、純資産の増加額として加えている。
この知財価値は業績に反映されない企業への期待値とも言え、小売りやサービス業においてはブランド力として知財の価値が反映されている。
新型コロナの逆風の中でも株価が大きく下がらない企業は知財価値を豊富に持っている。株式市場が知財価値を認識し、期待値が高くなっているためだ。市場から評価されれば経営戦略を立てやすいし、最終的には大きな時価総額を背景に市場からの資金調達もしやすい。ポストコロナを見据えた場合、知財価値の大きい企業は業績回復が相対的に速くなると考えられる。
老舗の企業がランキング上位に
小売・サービス業の中で知財価値が最も大きいのは東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(4661)だった。金額は4.7兆円だ。2位以下はファーストリテイリング(9983)、リクルートホールディングス(6098)と続く。株式市場で知財価値がすでに評価されている老舗の企業がランクインした。
■知財価値ランキング(金額)
出所: QUICKのデータを基に日本知財総合研究所作成
知財価値の実額だけを見ると、どうしても規模の大きい企業が有利だ。知財価値と純資産との比率を見ることで、バランスシートに計上されている資産に対し、多くの知財価値を持つ企業を求めてみた。
グレイスは知財価値の比率大きく
小売り・サービス業の中で最も高いのはグレイステクノロジー(6541)で純資産の約28倍の知財価値を持っている。2位は、アイ・アールジャパンホールディングス(6035)で、純資産の約26倍の知財価値がある。
グレイステクノロジーは主にメーカー向けのマニュアルの作成、管理、運用システムや企画、翻訳サービスを提供する企業だが、ユニークなビジネスモデルをベースに高収益を維持しながら成長を遂げている。アイ・アールジャパンホールディングスは企業のIR・SR(投資家・株主向け広報)に特化したコンサル業務が主力だ。特に株主向け広報において上場企業の支配権(議決権)の確保に関するアドバイザリー業務というビジネスモデルはユニークで、こちらも高い収益性を維持しながらの成長を続けている。ニッチながら市場の拡大が見込まれること、他社の参入が困難な専門性の高い分野であることなどが、高い知財価値につながったとみられる。
■知財価値ランキング(知財価値/純資産比率)
出所: QUICKのデータを基に日本知財総合研究所作成
(2020年6月25日)
日本知財総合研究所 (三浦毅司 [email protected] 電話080-1335-9189)
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