物流系不動産投資信託(REIT)のGLP投資法人(3281)がコロナショック前に付けた年初来高値を視野に入れ始めた。26日は続伸し前の日に比べ2.81%高い14万9500円で取引を終えた。23日に公募増資で約200億円を調達すると発表。過去、資本効率が悪い企業が増資でイージーマネー(低コストの資金)を手にしてきた経緯から、「増資=売り」の連想が働きやすい。だが下げ幅が限定的だったのは、成長資金が確保できると市場が素直に評価したためだ。
■「攻め」の公募増資
「投資口価格に割安感は乏しいが、公募増資や物件取得に加え、分配金の増額も発表し、前向きに捉えられる内容だ」。みずほ証券の大畠陽介シニアアナリストは話す。GLPは前日終値(14万5000円)を挟んだ動きが続き、市場は「攻め」の公募増資と受け止めた。
調達額は195億8000万円。新たに発行する投資口は14万9560口で、発行済み投資口数は増資前から4%増える。今回の増資に伴って1口あたり分配金の増額も発表。2021年2月期の1口あたり分配金(調整後業績ベース)は2638円と、前回予想(2571円)と比べ2.6%増える。
REITが増資すると調達資金を物件取得に充てることが大半なので、すぐに収益に結びつくケースが多い。今回の調達資金も「首都圏の物流取得の取得費用に充てる」(GLPジャパン・アドバイザーズ)という。
※GLPの投資証券の価格推移
■物流施設への需要は高まる
GLPによる公募増資は2018年9月以来1年9カ月ぶり。3月にはコロナショックで東証REIT指数が歴史的な暴落に見舞われただけに、市場では「リーマン・ショック時などと比べると、思いのほか早く増資が再開された印象」(国内銀行アナリスト)との声も聞かれる。
新型コロナ対策で人との接触を減らすことを求めた「新しい生活様式」が定着し、インターネット通販の利用が急速に広がる。GLPジャパン・アドバイザーズも「生活様式の変化で電子商取引(EC)市場が拡大するなか、物流施設への需要は一段と高まってくるのではないか」と話している。20年2月期は賃料契約の改定対象面積全体で賃料上昇率が4.4%となり、20年8月期も3~4%の賃料上昇を見込んでいる。「攻め」の増資は巣ごもり銘柄としての布石を打っているようにみえる。(日経QUICKニュース(NQN)末藤加恵)