企業のESG(環境・社会・企業統治)課題への取り組みを数値化して示すESGスコア。独ESG評価会社アラベスクS-Rayの6月末時点のESGスコア(100点満点)で小売業を順位付けしたところ、日本企業の首位はスギホールディングス(7649)の68.70点だった。直近2四半期の変化をみると、セブン&アイ・ホールディングス(3382)とファーストリテイリング(9983)の点数と順位の上昇が目立った。
■日本の小売業の平均点は昨年末比で上昇
新型コロナウイルス感染拡大は雇用や報酬といったESGのSの領域に影響を与えている。サプライチェーンでの課題なども注目されるアパレルを含む小売業を対象にランキングしてみた。
アラベスクS-Rayがカバーする全世界の小売業のESGスコアは、6月末時点の平均が50.47点と、昨年末に比べ0.42点低下した。このうち日本企業に絞って平均すると、6月末時点で53.94点と同1.58点上昇した。
6月末時点での世界の小売業ランキングでスギHDは5位、国内2位のセブン&アイは8位とトップ10に2社が入った。
■セブン&アイは2位、ファストリは6位に浮上
国内小売業上位10社のうちESGスコアの上昇が目立つのが、昨年末の7位から2位になったセブン&アイと、10位から6位に浮上したファストリだ。セブン&アイはSの項目、ファストリはGの項目が比較的高く評価されているもようだ。
この半年間の株価動向を振り返ると、6月に高値更新のスギHDはさておき、セブン&アイとファストリともに6月末時点では日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)と同様に昨年末比でマイナス圏だった。ESGスコアの上昇が足元の株価の上昇につながるとは限らない。
■コロナ禍でもスコア上昇企業は長い目で
アラベスクS-Rayは企業の公開情報と世界の情報元からESG評価に必要なデータを自動収集し、人工知能(AI)による独自の手法でESGスコアを毎日更新している。ESGスコアはE、S、Gの3つのサブスコアから成り、サブスコアは合計22の評価項目から構成される。評価に人為的な判断が入り込まないとすれば、コロナ禍にあって特にSの項目の評価が上がったり、高い水準を維持したりした企業は将来的に注目に値するのではないか。(QUICKリサーチ本部 遠藤大義)