独ESG評価会社アラベスクS-Rayが国連グローバルコンパクト(GC)の原則に基づいて企業の行動規範を評価して算出する「GCスコア」(100点満点)で、6月30日時点の国内上場企業の首位は富士通(6702)の71.24点だった。オムロン(6645)、積水化学工業(4204)、アサヒグループホールディングス(2502)も70点を超えた。
■世界ランキング首位はユニリーバ
日本企業557社の平均は54.22点。分布を10点刻みでみると、60点以上70点未満が196社と最も多く、50点以上60点未満(177社)と合わせると全体の約7割を占めた。
同日の世界ランキング首位は英蘭ユニリーバの75.42点で、日本企業では富士通の18位が最高だった。ユニリーバは2015年に「国連人権報告フレームワーク」に沿って人権課題に関する報告書を世界で初めて作成した企業として知られている。
■人権・労働・環境・腐敗防止を評価
国連グローバルコンパクトは持続的な成長に向け、企業に対して人権・労働・環境・腐敗防止の4分野・10原則の順守を求めている。アラベスクは70カ国・地域以上の上場企業約7300社について、企業の公開情報と世界の情報元から評価に必要なデータを自動収集し、人工知能(AI)による独自の手法で「ESGスコア」だけでなく、「GCスコア」も算出している。
GCスコアは人権・労働・環境・腐敗防止の4つのサブスコアで構成されている。一方、ESGスコアは業種別に企業業績に重大な影響を与えるESG課題に基づいて各企業を評価する。E(環境)、S(社会)、G(企業統治)の3つのサブスコアから成り、サブスコアは合計22の評価項目から構成されている。
■リスクを測る指標、高得点企業の開示にも注目
GC・ESGの両スコアで評価基準が異なるが、ESGスコア国内首位のオムロンがGCスコアで国内2位だった。ESGスコア国内3位のNTTドコモ(9437)、同7位のサントリー食品インターナショナル(2587)もGCスコア上位10社に入るなど、ともに高得点の企業もある。
企業による人権侵害や差別は許されず、ひとたび問題が発覚すれば、顧客や投資家が離れかねない。GCスコアの変動は企業のこうしたリスクを測るバロメーターの役割を果たすといえそうだ。
またGCスコアの高い企業による人権など4分野への取り組みを調べれば、有益な情報を得られるかもしれない。その企業の株を買うかどうか検討中の投資家だけでなく、同業他社の経営者やIR担当者にとっても参考になるのではないか。(QUICKリサーチ本部 遠藤大義)