証券アナリスト=三浦毅司(日本知財総合研究所)
6月24日に映像事業をスピンオフすると発表したオリンパス。買い手は、日本産業パートナーズ(JIP)が管理・運営するファンドであり、9月末までに正式契約を結ぶことを目指すという。
医療機器分野ではトップクラスの技術力を持つオリンパスだが、スピンオフする映像事業の実力はどうか。特許価値を推定する「KKスコア」を使って分析した。
特許の出願件数は見劣り
特許出願状況をみると2009年に出願が落ち込んだ。13年から17年にかけて回復傾向にあったが、オリンパスのその他の事業分野と比べると低迷している。
これはカメラを中心とする映像分野の市場縮小の影響が大きい。スマートフォンのカメラ機能の進歩で、一般のデジタルカメラの市場は急激に縮小した。採算を確保できずに研究開発意欲が減退したことが大きく影響したと思われる。
オリンパスの場合は2011年に発覚した巨額損失の影響も大きかったと思われる。市場が縮小する中、この時期に十分な研究開発資金を投下できなかったことが、今回のスピンオフを決定づけた。
オリンパスの映像事業における特許出願状況
出所: PatentSQUAREのデータを基に日本知財総合研究所作成
特許評価では中途半端
オリンパスの映像事業について、特許評価からみたランキングは9位だった。上位はシャープ、パナソニック、韓国企業などの大手が占め、特許評価の格差も大きい。ランキングの下位にはJSRや日東電工など分野を絞って事業を展開している企業が多く、オリンパスのポジションは中途半端と言わざるを得ない。同社の映像事業に興味を示す企業が、それほど多くない可能性もある。
出所: PatentSQUAREのデータを基に日本知財総合研究所作成
2つの特許で評価高く
KKスコア分析によれば、映像事業の中で評価の高かった特許は以下の2つである。
◎特許第4766913号:頭部装着型画像表示装置
シーアラウンドさらにはシースルー機構を持ち、小型・軽量で、外界視界が大きく、低消費電力で電子像の輝度が高く、使いやすい頭部装着型画像表示装置に関する特許。具体的には、常時着用でき、視界を邪魔せず必要なときだけ情報を表示するヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)にかかわる特許である。
◎特許第3934506号:撮像システムおよび画像処理プログラム
撮像素子系に起因するランダムノイズの低減を図る撮像システムおよび画像処理プログラムに関する特許。カメラによる撮影時における画像の高品質化を可能にするものである。
現時点では、どちらも需要がどれだけあるかは未知数だ。技術の価値を高めるには用途開発や顧客の需要調査などの努力が欠かせないだろう。(2020年7月9日)
日本知財総合研究所 (三浦毅司 [email protected] 電話080-1335-9189)
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