7月24日の米国株式市場で半導体大手の株価の明暗が分かれた。インテルが一時、前日比18.0%安を付けた一方、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は17.4%高の69.94ドルと上場来高値を更新した。インテルが23日夕に4~6月期決算と併せて最先端半導体の発売の遅れを公表し、開発で先行するAMDが市場シェアを奪うとみなされた。
■「AMDに需要が移る」
インテルは処理能力が高い回路線幅が7ナノメートル(ナノは10億分の1)のCPU(中央演算処理装置)の発売が予定より半年遅れると明らかにした。パソコン向けは2022年後半から23年前半、データセンター向けは23年前半に出荷を始めるという。ライバルのAMDはパソコンとデータセンター向けの7ナノ半導体を発売済みで、21日には性能を上げたパソコン向け新製品を今週には発売すると発表した。
両社の開発力の差が浮き彫りになった。RBCキャピタル・マーケッツのミッチ・スティーブス氏は「インテルが7ナノ製品を開発する間に、AMDは3ナノ製品を開発しているだろう」と指摘する。バンク・オブ・アメリカのビベック・アーヤ氏は「5ナノ製品を開発中のAMDに需要が移ると予想され、AMDのシェアはパソコン向けが現在の17%から20%へ、データセンター向けは10%から25%に拡大する」と予想した。
すでに顧客離れは始まっている。アップルは6月下旬、パソコン「Mac」に自社開発のCPUを搭載すると発表した。これまでに使っていたインテル製からの切り替えだ。市場ではこの決断の背景にも7ナノの開発の遅れがあるとみられている。インテルは昨年後半、半導体の増産に手間取り、顧客であるHPやデルなどのパソコン生産が滞った経緯がある。生産や開発で失点続きのインテルに供給を依存すれば、新製品の発売サイクルが乱れるとアップルが警戒した可能性がある。
AMDは28日夕に2020年4~6月期決算を発表する。23日夕に発表されたインテルの4~6月期決算と同様に、データセンター向け半導体需要の高まりなどで前年同期比2割以上の増収が見込まれる。「AMDの半導体を搭載するゲームの新機種発売やデータセンター向けCPUの新製品発売を年後半に控え、強い業績見通しを示す」(ノースランド・キャピタル・マーケッツ)との声が多い。規模ではなお他を圧倒するインテルだが、AMDの追い上げに尻に火がつき始めている。(NQNニューヨーク 古江敦子)