7月27日の東京株式市場で、日本電産(6594)株が9営業日続伸し、年初来高値を更新した。21日に発表した2020年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は売り上げが減少したものの営業増益を確保した。厳しい経営環境の中で見せた底堅さに市場参加者の買い意欲が鮮明になっている。
日本電産が21日にオンラインで開催した決算説明会では、「守り」と「攻め」の両にらみで進める事業戦略の強さが示された。説明会の内容をテキストマイニングしたところ 「WPR(ダブル・プロフィット・レシオ、利益倍増プロジェクト)」、駆動モーターシステム「Axle」、米電気自動車(EV)大手「テスラ」などへの言及が目立った。
4~6月期が減収になったのは車載向けモーターの不振が主因だ。そのなかで増益になったのは「WPR」など、同社が取り組んできたコスト削減や生産性改善の効果になる。アナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサスは減益予想で、市場にとってはサプライズ決算となる。
4月30日の1~3月期決算の発表時、日本電産は売上高が半分になっても赤字にならない収益体質を構築するWPRを、より細分化して強化する方針を示していた。4~6月の実績は「守り」の強さがうかがえる。
「攻め」に目を向けるとEV用の「eAxle(イーアクスル)」の受注の伸びが際立つ。EV先進国である中国メーカーを筆頭に欧州や日本など新規顧客からの受注が増えている。
証券アナリストやマスコミからの質問では、EV向け製品の先行きに関心が集まっていた。
永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は、量産効果と技術の進化によるコスト競争力と性能の向上が好調な受注につながっていると説明し、「我々は車の部品業界のテスラみたいなもの。モーターの供給コストは着実に下がっている。EVの分水嶺となる2025年に向けて着実に歩んでいる」と述べた。テスラの株価は3月以降に急上昇し、時価総額はトヨタ自動車を抜いて自動車業界で首位になった。日本電産がテスラだとすれば、時価総額はまだまだ割安だ--。永守CEOの発言は、こんなメッセージを市場に送っているようだ。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)