半導体大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の業績改善への期待が強まっている。7月28日夕に発表した2020年4~6月期決算はパソコン、データセンター向けの最先端製品の販売が収益を押し上げた。競合のインテルが技術開発で手間取るなか、新製品の需要増を見込み通期の売上高見通しを上方修正した。
■売上高見通しを引き上げ
「ノートパソコン向けとデータセンター向けCPU(中央演算処理装置)の売上高が過去最高になり、前年同期の2倍になった」。4~6月期の決算資料で、リサ・スー最高経営責任者(CEO)は語った。同期の売上高は前年同期比26%増の19億3200万ドル、純利益は4.5倍の1億5700万ドルと市場予想を上回った。パソコン部門が45%増え、データセンター向けCPUが好調だ。スーCEOは決算説明会で「データセンター向けの売上高は全体の2割に拡大した」と説明した。
市場参加者を驚かせたのは好業績だけではなく、20年12月期通期の売上高見通しの引き上げだった。4月時点ではコロナ禍での景気の不透明感から前期比20~30%増と幅を持たせていたが、現時点では32%増に上方修正した。年後半の新製品投入とゲーム機向けの出荷増を織り込んだという。スー氏は「我が社の成功路線が続くことを映した」と自信を見せた。
■新製品や新型ゲーム機
AMDの製品への需要は強い。最先端技術である回路線幅を7ナノ(ナノは10億分の1)メートルに縮めた高速処理能力を持つ新製品を続々と発売する。デスクトップ向け新製品の発売を前週に明らかにしたほか、年末までにデータセンター向け新製品の発売を予定している。「インテルがデータセンター向け7ナノ製品の発売を予定する23年までに、AMDの市場シェアが現在の20%以下から30~40%に高まる可能性がある」(ウェドブッシュ証券)と期待されている。
年末商戦に発売予定のソニーのプレイステーションとマイクロソフトのエックスボックスの新型ゲーム機にはAMDのCPUが搭載されており、4~6月期決算にもその効果が表れ始めた。ソニーはすでに年内の生産見通しを引き上げており、AMDの業績押し上げにつながるとみられる。
■年末に掛けて落ち込む可能性も
もっとも、目先ではリスクもある。コロナ禍で年前半に強まったパソコン需要が年末に掛けて落ち込む可能性があることだ。「パソコン部門の売上高が約7割を占めるAMDの業績に響く可能性はある」(ゴールドマン・サックス)。
AMDの株価は28日の時間外取引で終値を一時は1割上回る74ドル台を付け、前日に付けた上場来高値を上回って推移している。株価は昨年末比で6割高い水準にあり、過熱感を指摘する声もある。それでも「順調な新製品の発売ペースが市場シェアの拡大につながり、向こう数年でインテルとの差が縮まる」(サスケハナ・ファイナンシャル・グループのクルストファー・ローランド氏)と、成長を予想する市場参加者は増えており、株高期待はむしろ高まっているようだ。
(NQNニューヨーク 古江敦子)